エンディングノート

エンディングノートには書きにくいこともしっかりと残しておくべきです~借金の有無や連帯保証人のことなど

終活というものを意識する人が増えてきたこともあり、エンディングノートを残しておこうと考える人が多くなっているようです。

エンディングノートには、遺言書のように法的な効力はありませんが、自分が亡くなったり認知機能を失ってしまったりしたときに、記録を残しておくことによって家族の負担を減らしてあげることが可能です。

エンディングノートには法的な効力がない代わりに、何を書いてもいいことになります。

さまざまなエンディングノートが市販されていますが、必ずしもそういったものを使わなければならないというものでもありません。

一般の大学ノートでもなんでもいいので、自分が子孫に残したいと思うことを記録として書いておけばいいのです。

子孫に残す記録というと、どうしても都合の悪いことは書きたくないというのが本音だと思います。

しかし、相続のときのトラブルなどを未然に防ぐためには、都合の悪い書きにくいこともしっかりと残しておいた方が無難といえます。

借金がある場合にはその額を相続人が把握できるように書いておく

親としては、自分が借金をしていることを子どもに知られたくないと考えるのは当然です。

子どもに心配をかけたくないという思いもあるでしょうし、親としてのプライドもあります。

「どうせ自分が死んだら借金はチャラになるはずだから、このままずっと黙っておこう」などと考える人もいるかも知れません。

確かに、親がどれだけ多額の借金をしていようとも、連帯保証人にさえなっていなければ、子どもに返済の義務はありません。

しかし、それは「親が生きている間だけ」のことなのです。

親が死んでしまったら、その借金は子どもにマイナスの財産として相続されてしまい、子どもに返済義務が発生してしまうのです。

土地や現金などのプラスの財産がたくさんあって、借金というマイナスの財産を差し引いてトータルでプラスになるのであれば、そのまま相続をしてしまっても問題はありません。

プラスの財産を処分することで、借金の返済にあてることができるからです。

ところが、トータルでマイナスの財産の方が多い場合には、相続をしたことによって借金を返済しなければならなくなってしまいます。

プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続放棄をすることによって借金の返済義務を逃れることができますが、相続放棄ができるのは被相続人が亡くなってから3ヵ月以内に行わなければなりません。

親が借金をしていることを知らずにそのまま普通に相続をしてしまった場合、あとで借金があることに気がついてもどうすることもできなくなってしまいます。

確かにエンディングノートに自分の借金を書くというのは気が重いと思いますが、自分の子孫にマイナスの財産があることをしっかりと残しておくことはとても大切だと思います。

参考記事:借金のある親が亡くなると子どもに返済の義務が発生します~相続放棄を選択すべきケースとは?
        

誰かの連帯保証人になっている場合もエンディングノートに残すべきです

自分が亡くなったあとに、相続人に迷惑をかけてしまう可能性があるのは、借金だけではありません。

もしあなたが誰かの連帯保証人になっていた場合、その連帯保証人としての義務も相続の対象になってしまうのです。

つまり、あなたが亡くなってしまったあとは、相続人があなたに代わって連帯保証人としての責任を果たさなければならなくなってしまうのです。

特に、多額の借金をしている人の連帯保証人になっている場合には注意が必要です。

その人の連帯保証人になるということは、自分は1円もお金を借りていないのに、自分自身も多額の借金をしているのと同じことになるからです。

借金をしている本人と、まったく同じ責任を負わされるという点が、連帯保証人の恐ろしいところなのです。

借金が相続の対象になるということは知っていても、連帯保証人としての義務まで相続の対象になることは知らない人も多いようですので注意が必要です。

連帯保証人となっている債務の額によっては、相続人が相続放棄を選択すべきかどうかの判断をしなければなりませんので、生前のうちにそのことを直接伝えておくか、エンディングノートに記載をしておくべきでしょう。

参考記事:亡くなった親が他人の連帯保証人になっていると相続人には借金の支払い義務が発生します
         

もちろんエンディングノートに書かない方がいいこともあります

借金をしていたり誰かの連帯保証人になっていたりすることは、なかなかエンディングノートには書きにくいことですが、残された人のためには書いておくべきだということがお分かりになったかと思います。

しかし、書きにくいことも隠さずにエンディングノートに書いた方がいいとは言っても、どんなことでも赤裸々にすべてを書く必要はありません。

むしろ、書かない方がいいこともたくさんあります。

家族が知らない方がいい過去の異性遍歴や犯罪歴など

エンディングノートを自分史という考え方でとらえるならば、すべてを包み隠さずに書くべきなのでしょう。

しかし、残された人に対しての自分のメッセージという意味合いで考えるならば、家族の知らない過去の異性遍歴や犯罪歴などは、あえて書かない方が無難でしょう。

借金をしていたり連帯保証人になっていたりするのとは違い、そういったことを伝えなくても残された人は何も困らないからです。

ただし、婚姻関係にない相手との子どもを認知したいと思っているなど、どうしても残された家族に知らせておかなければならないこともあるかも知れません。

これはこれでとても大切なことですが、エンディングノートに書くべきことではありません。

そういったことは、エンディングノートではなく、法的に効力のある遺言書に残しておかなければなりません。

また、日頃から家族と親しくしている友人や親せきなどの秘密を暴露するようなことも、エンディングノートには残さない方がいいです。

秘密を暴露して家族や親戚を驚かせたいという気持ちは分かりますが、自分のエンディングノートのせいで、これまで親しくしていた人たちの関係を悪化させてしまうというのは考えものです。

そういったことは、よく言われるように「墓場まで持って行く」ようにした方がいいでしょう。

財産に関することはあまり詳細に書かない方が無難

自分が所有する不動産や現金などの財産について、大まかにどういったものがあるのかを、エンディングノートに記載することは特に問題ありません。

しかし、通帳や印鑑をしまってある場所、暗証番号などを細かく記載したりするのは、やめておいた方がいいでしょう。

亡くなったあとに、誰かに搾取されてしまう可能性がありますし、万が一、泥棒などが入ったときにエンディングノートを見られてしまったら隠し場所が分かってしまいます。

また、財産の分け方なども、エンディングノートに記載してはいけません。

エンディングノートには法的な効力がありませんので、下手にそういったことを書いてしまうと、相続人どうしで争いのもとになってしまいます。

財産の分け方に関しては、法的な効力がある遺言書にしっかりと残しておくべきです。

参考記事:エンディングノートと遺言書の違いは何か?~終活のためのそれぞれの役割分担とは