法事・法要の基礎知識

お布施の本当の意味と葬儀や法事でお坊さんに渡すときの相場

お布施というと、ほとんどの人はお葬式や法事のときにお坊さんに渡すお金のことを思い浮かべると思います。

しかし、お布施というのはそんな単純なものではありません。

お布施というのは、仏教の六波羅蜜(ろくはらみつ)という修行方法のなかの1つです。

しかも、その修行法の1つであるお布施も「財施・法施・無畏施(むいせ)」という3種類に分類されます。

ここでは、ほとんどの人が知らないお布施の本当の意味や、お坊さんに渡すときの相場について紹介してみたいと思います。

六波羅蜜という大乗仏教の修行をする人が実践すべき6つの項目

お布施というのは、もともと六波羅蜜という大乗仏教の修行をする人が実践すべき6つの項目のなかの1つになります。

この六波羅蜜というのはお坊さんだけが行うべき修行ではなく、すべての人が生きて行くうえで大切な教訓ともされています。

六波羅蜜の6つの項目というのは「布施」「持戒」「忍辱」「精進」「禅定」「智慧」になり、以下のような意味があります。

「持戒」というのは、「つつしむ」ということで、戒律を守って相手のことを考えて人間らしく生きることを意味します。

「忍辱」というのは「しのぶ」ことで、大変なことがあっても頑張って耐えることを意味します。

「精進」というのは、「はげむ」ということで、上を目指して頑張って最善をつくすということを意味します。

「禅定」というのは、「身を静める」ということで、どのような場面であっても冷静になって心を落ちつけることを意味します。

「智慧」というのは、「まなぶ」ということで、正しい判断力を持って、真理を見きわめる力を得ることを意味します。

「布施」というのは、「ほどこす」ということで、見返りを求めずに人に施しを与えることを意味します。

このように、六波羅蜜のなかにある仏様の境地にいたるための修行法の1つがお布施ということになるのです。

お布施には財施・法施・無畏施の3つの種類があります

六波羅蜜のなかの1つであるお布施ですが、そのお布施も3つの種類にわけることができます。

3つの種類というのは、「財施・法施・無畏施」になります。

私たちがお葬式や法事のときにお坊さんに渡すお布施は、財施のことをいいます。

それでは、3つのお布施について具体的に説明をしてみます。

お金や物を施し与えることを財施といいます

財施というのは、僧侶や貧しい人に対して金銭や物を施し与えることをいいます。

日頃わたしたちがお布施といっているのは、まさにこの財施ということになります。

お布施のことを、「お坊さんにお経を読んでもらった代金」といった程度に考えている人も多いと思います。

しかし、この財施というのは人に対して金銭や物を施すという立派な修行なのです。

ですから、「もったいない」とか「高いお布施を払って損をした」といった気持ちで財施をすると、仏教的な観点からはまったく意味がないことになります。

恩に着せるような気持ちをまったく持たずに施し与えることで、六波羅蜜のなかの修行の1つをしたことになるわけです。

お坊さんがお経を読むことは法施にあたります

法施というのは人に釈迦の教えを説いたりお経を読んだりすることをいいます。

財施が金銭や物を施すのに対して、法施は教えを施すお布施ということになります。

つまり、お布施というのは、財施のように私たちがお坊さんにお金や物を施すことだけをいうのではないのです。

お坊さんが故人に読経をしたり私たちに教えを説いたりすることも、いわゆる「お布施」ということになるのです。

お坊さんが葬儀や法事でお経を読むのは、お金儲けのためではなく、故人に対して法施という施しをしているという解釈になるわけです。

不安や恐怖を取りのぞいて安心させることを無畏施といいます

財施と法施に関してはなんとなくイメージがつかめたかと思いますが、もう一つのお布施である「無畏施」にはどういった意味があるのでしょうか?

この無畏施というのは、人の不安や恐怖を取りのぞいて安心させてあげる施しのことをいいます。

財施や法施と違って、ちょっとイメージしにくいかと思います。

たとえば、人が悩んでいるときに親身になって相談にのってあげることは無畏施になるでしょう。

また、会社の上司などが、部下に対して頭ごなしに怒って恐怖を与えたりするのではなく、やさしく接してあげるといことも、立派な無畏施になると思います。

このように、無畏施というのは、普段の生活のなかでいつでも実践しようと思えばできるお布施ということになります。

ほんとうはお坊さんに渡すお布施(財施)には決まった額はありません

私たちが日常的に言っているお布施というのは、財施のことだということがお分かりになったかと思います。

そのお布施(財施)ですが、実際にお坊さんにお渡しするときの金額について悩むこともあるかも知れません。

しかし、本来はお布施に決まった額というものはありません

もともと、お金の価値観というのは、人それぞれでことなります。

同じ1万円であっても、大金持ちの人の1万円と生活が厳しい人の1万円ではまったく価値観が違うはずです。

そのため、お坊さんのほうとしても具体的な金額をいわずに、「お気持ちで」などといったりするわけです。

しかし、お気持ちといわれても世間の相場とかけ離れてしまってはいけないので、ある程度の目安は知っておきたいと思う人が多いと思います。

以下に、葬儀や法事のときにお坊さんに渡すお布施の目安を紹介してみたいと思います。

お葬式のときにはお坊さんに渡す目安は20万円~100万円以上

お坊さんに渡すお布施が一番高額になるのが葬儀のときです。

いわゆる戒名料などといわれることもあり、つけられる戒名によっても相場が大きく変わったりします。

戒名のランクによる大まかな相場は以下のようになります。

●信士・信女・・・・20万円~50万円
●居士・大姉・・・・50万円~80万円
●院信士・院信女・・・・70万円~100万円
●院居士・院大姉・・・・100万円以上

もちろん宗派やお寺によっても相場は変わってきますので、実際にいくらお渡ししたらいいのか見当がつかないときには、葬儀社の人などに確認をしておくといいでしょう。

法要や法事のときに僧侶に渡すお布施の目安

葬儀のときには、いわゆる戒名料という形で高額なお布施をお坊さんに渡すのが一般的ですが、法事のときであれば、それほど高額にはなりません。

目安としては以下のような感じになります。

●命日・・・・5千円~1万円
●四十九日・・・・3万円~5万円
●一周忌・・・・3万円~5万円
●三回忌・・・・1万円~5万円

こういった法要を自宅で行うときには、お布施とは別にお車代として5千円~1万円を渡すのが普通です。

納骨や改葬をするときはいくらお渡しするのか?

お墓や納骨堂に納骨をするときにも、お坊さんにお布施を渡すことになります。

金額の目安としては、1万円~5万円くらいが相場になります。

また、お墓を改葬するときにも、お布施をお渡しします。

この場合は、古いお墓の魂抜きのための閉眼供養と、新しいお墓に魂入れをするときの開眼供養の両方でお布施をお渡しする必要があります。

いずれの場合もそれぞれ1万円~5万円が相場となります。

また、お寺によっては、改葬の際にこれらのお布施とは別に、離檀料をとるところもあります。

この離檀料がかなりの高額になって、トラブルになるケースもあるようですので、事前に確認をすることが大切です。

参考記事:墓じまいのときトラブルになりがちな高額な離檀料~埋葬証明書が発行されない?