自分の親が亡くなっても、すぐには遺品整理をしない人が増えているようです。
親の住んでいた家が遠方にある場合などは、遺品整理をするといっても簡単にいかない場合もあるでしょう。
そのうちにやろうと思っていながら、そのままになってしまうケースも少なくないようです。
しかし、親が生命保険に入っていたり郵便貯金の積立などをしていたりした場合、そのままずっと放置しているとやがて受け取れなくなってしまう可能性があります。
質素な暮らしをしていた親が、その生活ぶりからは想像もできないほどのお金を貯めこんでいたりするケースも決してまれではありません。
せっかくの親の財産が時効などによって無効となってしまわないためにも、遺品整理は早めにやっておいた方がいいでしょう。
親の遺品から思わぬ資産が出てくることがあります
質素な暮らしをしていた親の遺品整理をしていたら、タンスの中から数千万円の現金がでてきたり、金のインゴットがでてきたりという話をときどき耳にします。
あるいは、遺品整理業者にすべてをお任せしたら、現金が入った袋をゴミと一緒に捨てられてしまったとか、現金を業者にネコババされてしまったという話も実際にあります。
自分の親の暮らしぶりをみて、まともな遺産なんてないはずだと、勝手に思い込まない方がいいかも知れません。
少なくとも、1人暮らしをしていた親が亡くなったあとは、本格的な遺品整理は後回しにしたとしても、現金や通帳、保険証券、株券といったものが残されていないかは早めに確認をした方がよさそうです。
相続税の申告が終わってしまったあとに、そういった遺産が見つかった場合には、延滞税が発生することになりますし、生命保険や積み立てた郵便貯金などが受け取れなくなってしまう可能性があります。
生命保険は3年を過ぎると時効になってしまいます
亡くなった親が生命保険に加入していた場合、3年以内に保険金の請求をしないと時効が成立してしまいます。
また、本人が死亡したことを保険会社に連絡しないと、その後も銀行口座から月々の保険料が引き落とされ続けることになります。
亡くなったあとに引き落とされた分に関しては、あとから返還をしてもらうことが可能ですが、こちらも3年で時効になってしまいます。
せっかく受け取ることのできる保険金を放置したり、支払う必要のない保険料を支払い続けて時効を成立させたりしてしまうというのは、非常にもったいない話です。
2015年に生命保険会社が行った調査によると、請求漏れの生命保険金が20億円もあるそうです。
1人暮らしの親が亡くなったときには、どこかに保険証券がしまわれていないかどうか、しっかりと確認することが重要です。
ただし、時効を過ぎてしまったからといって、絶対に保険金を受け取れないということではありません。
死亡してから3年以上経過していたとしても、死亡していることの証明ができれば支払いに応じる保険会社もあります。
時効が成立してしまっている保険証券を発見した場合でも、ダメもとで問い合わせをしてみるといいでしょう。
放置したままの預金口座も時効が成立してしまうのか?
預金口座の取引がまったくなくなってから、ある期間が過ぎると法的には時効が成立するとされています。
銀行の場合は、商人として商法が適用されるため、5年で消滅時効が適用されることになっています。
信用組合や労働金庫などの場合は商人としてではなく、民事行為としての扱いとなるめ消滅時効は10年となります。
「お金は銀行に預けておけば安心」と多くの人が思っているかも知れませんが、時効のことを考えるとタンス預金が一番安全といえなくもありません。
しかし、実際には時効が成立したからといって、預金が引き出されなくなるということはないようです。
取引がなくなってから10年以上過ぎた口座であっても、普通に引き出せます。
また、休眠預金等活用法により、2019年1月1日以降の最後の取引から10年以上取引がない口座は、休眠口座となって預金は国庫に入ることになります。
参考:休眠預金等活用法-金融庁
しかし、休眠口座となって国庫に入ってしまったお金であっても、没収されてしまうということではありません。
休眠口座となってしまっても、手続きをすることで、預金を引き出したり口座を解約したりすることは可能です。
そういった意味では、親の遺品のなかから長期間取引のない銀行口座が発見されたとしても、それほどあわてる必要はなさそうです。
郵政民営化前の郵便貯金の定期・定額・積立貯金は注意が必要
銀行の預金口座の場合は、10年間取引がなくて休眠口座扱いとなってしまっても、お金を引き出すことが可能ですので、それほど期限を気にする必要はありません。
ところが、郵政民営化前の2007年9月30日までに預けた郵便貯金の定期・定額・積立貯金に関しては注意が必要です。
なぜなら、これらは満期から20年2ヵ月が過ぎてしまうと、権利が消滅してしまい、1円も受け取ることができなくなってしまうからです。
実際に2016年には、約68億円もの定期・定額・積立貯金が、期限切れで払い戻せなくなっているそうです。
親の遺品整理をしていて、古い郵便貯金の通帳を発見したときは、満期を過ぎていないどうかをまっ先に確認をするようにした方がいいでしょう。
ただし、民営化後のゆうちょ銀行の口座や、民営化前であっても通常郵便貯金の口座であれば、他の銀行の口座と同様の扱いになります。
つまり、最後の取引から10年が過ぎると休眠口座扱いになってお金は国庫に入ってしまいますが、手続きをすることで引き出しをしたり解約をしたりすることが可能です。
通常郵便貯金であるにもかかわらず、郵政民営化前の口座だということで、引き出せなくなると勘違いをしている人もいるようですが、そんなことはありませんので安心して大丈夫です。
あとから遺言書が見つかったときは遺産分割をやり直すことになります
親が亡くなったときには、保険証券や預金口座だけではなく、遺言書が残されていないかどうかを確認することもとても大切です。
なぜなら、相続の手続きがすべて済んだあとに遺言書が見つかった場合、遺産分割をやりなおさなければならなくなるからです。
そうなってしまった場合、法定相続人どうしでトラブルになる可能性が高くなります。
たとえば、親が亡くなったあとに遺言状の存在を知らずに、金融資産の1200万円を2人の兄弟が600万円ずつ相続をしたとします。
ところが、数年後に親の遺品整理をしているときに遺言状が発見され、そこに記載されていた相続の割合が「兄2に対して弟1」だった場合、兄の相続分は800万円、弟の相続分が400万円ということになります。
遺言書には時効というものがありませんので、たとえ亡くなったあとどれだけ年数がたっていようとも有効になります。
兄と弟はすでに600万円ずつ相続をしてしまっていますので、遺産分割をやり直して、弟は兄に対して差額分の200万円を支払わなければならなくなります。
すでに遺産を分けてしまっているのに、いまさらそんなことを言われても弟の方は納得できないでしょうが、法的にはそうせざるを得ないのです。
しかし、親が亡くなって年月がたってからこのような遺言状が発見されても、すでに分割した遺産を使ってしまっていることも多く、差額分を支払うといっても簡単にはいかないこともあるでしょう。
その結果、それまで仲のよかった兄弟がトラブルになってしまったりするわけです。
もちろん、遺言書に「兄2に対して弟1」と書いてあったからといって、必ずしもその通りにしなければならないということではありません。
当事者が話し合って、お互いに納得がいくのであれば、兄が700万円で弟が500万円としてもいいですし、兄が600万円で弟が600万円でもいいわけです。
あくまでも、話し合いで決着がつかない場合には、法律にしたがって遺言状に書かれた割合で遺産分割をすることになるわけです。