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相続トラブルは他人事じゃない! 発生原因と予防法を解説

相続トラブルは他人事じゃない! 発生原因と予防法を解説

人が亡くなった後は、遺産相続を行う必要があります。
スムーズに進むのが理想的なのですが、相続をめぐってトラブルが発生してしまうことは、残念ながら珍しくありません。

家族や親族の争いを防ぎ、速やかに遺産を相続するにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、相続トラブルの起きる理由や予防法を解説します。

相続トラブルの防ぎ方1:他人事ではないと考える

最初に強く認識しておかなければならないのは、相続トラブルは誰にでも起こりうるということです。
テレビドラマなどの影響で「相続トラブルはお金持ちの家で起こるもの、うちには関係ない」と考えている人も多いでしょう。
しかし、まったくそんなことはありません。
ごく一般的な財政状況の家庭でも、相続トラブルは発生しています。

裁判所が毎年発表している司法統計を見ても、その事実は明らかです。
平成29年のデータでは、遺産分割事件の約32%が総額1,000万円以下となっています。

自宅などの不動産や有価証券を合わせて1,000万円なら、決してお金持ちではありませんよね。
全体の約3分の1がこの規模ですから、まったく他人事ではないことがわかります。

また、「うちは兄弟姉妹と仲がいいから、トラブルにはならないよ」と油断するのは危険です。
人間は、何がきっかけで豹変するかわかりません。

とても仲のよかった兄弟が、親の遺産をめぐって争うケースは非常によくあります。
「うちは大丈夫」などと考えず、トラブルを防ぐために十分な対策を取る必要があるのです。

相続トラブルの防ぎ方2:発生原因を知る

一口に相続トラブルといっても、その原因や内容はさまざまです。
トラブルを未然に防ぐためにも、発生原因を知っておきましょう。

遺産分割で意見が合わない

誰がいくらの遺産を相続するかは、法定相続人同士の話し合いによって決めるのが原則です。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
特に意見が出なければ、「法定相続分」という基準に従って分けることになりますが、残念ながらすべての家庭がそうなるとは限りません。
「自分はもっともらえていいはずだ」と主張する人もいるからです。

たとえば、ずっと父親の仕事を手伝っていた兄と、まともに働かず遊んでばかりいた弟でも、基本的には対等な立場として扱われます。
この状況で2人が同額の遺産を相続すれば、兄が不満に思っても仕方がありませんよね。
他にも、親の介護の負担や家庭への貢献度合いなど、「もっともらえるはず」と主張する根拠はいくらでもあります。

遺産の総額が不明

遺産分割協議以前の問題として、遺産がいくらあるのかはっきりしないという状況もあります。
曖昧な状態で協議を進めても、後で新たな遺産が見つかれば、二度手間になってしまうのです。
また、「現金がこんなに少ないはずがない」「◯◯の権利書はどこに行った?」など、あるはずの遺産が見つからない事態も考えられます。

遺言の内容に不満がある

遺産分割協議において、最も優先されるのは遺言の内容です。
たとえ内容に不満があっても、原則的には従わなければなりません。
遺言で指定された取り分が、同じ立場のはずの兄妹姉妹より低ければ、多くの人は納得できないでしょう。
遺言書があったために、かえって話がややこしくなってしまうケースもありえます。

自分が相続人でないことに不満がある

遺言で指定された場合を除くと、相続人になれる可能性があるのは配偶者と血縁者のみです。
内縁の妻や子の配偶者などは、遺産相続の対象となりません。

「事実上の夫婦だったのに相続できないなんて!」「私は義父の介護をずっとしてきたのにもらえないの?」などと、不満が噴出する可能性は十分あります。

遺書が複数あるor後から遺書が出てきた

遺言書が複数存在していると、それぞれに矛盾する内容が書いてあることがあります。
遺言書を作り直した後に、古い方を処分し忘れたのかもしれませんし、相続人の誰かが自分に都合のいい遺言書を捏造したのかもしれません。
いずれにしても、どちらに従うべきかで揉めてしまうことは確実です。

また、遺産分割協議が無事に終わった後で遺言書が発見されることもあります。
遺言書の内容が協議の結論と異なっていれば、やはりトラブルになってしまうでしょう。

相続人全員が了承すれば、遺言書の内容よりも協議の結論を優先することは可能ですが、自分に都合がよければ遺言書を支持する人はいるはずです。

不動産の分割で揉める

現金を分割するのは簡単ですが、不動産はそう簡単に分割できません。
そのため、遺産の大半が不動産だと、分割の方法をめぐってトラブルになりやすいのです。

「売却してお金に変えてから分割すればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、すべてのケースでその方法が使えるわけではありません。
たとえば、亡くなった親と同居していた人にとって、家は遺産であると同時に現在の住居でもあります。
それを売ってしまうというのは、現実的ではありませんよね。

1人が不動産を丸々相続し、他の相続人にお金(代償金)を支払うという方法もありますが、そのためには相応の現金が必要となります。

一度に数百万円以上の現金を用意するのは、簡単ではないでしょう。
その上、協議が長引いていつまでも相続できずにいても、固定資産税は発生してしまいます。
このように、不動産は扱いが非常に難しいのです。

不自然な生前贈与や使い込みがあった

相続税の回避などを目的として、あらかじめ財産を譲っておくことを生前贈与といいます。
遺産分割協議では、生前贈与された金額も含めて考えるため、贈与を受けた人だけが得をすることは本来ありません。

しかし、中には生前贈与の実態が不透明なケースもあります。
知らない間に、遺産の大半が特定の人物に渡っているかもしれません。

これに近いケースとしては、遺産の使い込みがあります。
親の死が間近に迫った状態で、同居している子が親の財産を勝手に使えば、遺産を多めに相続したのと同じことですよね。
他の相続人がその事実を知れば、間違いなくトラブルに発展します。

想定外の相続人が出現

「親の死後に非嫡出子(いわゆる隠し子)が名乗り出る」というドラマのような話は、現実にも発生しています。
遺伝上の子であることが証明できても、認知されていなければ法律上の親子ではありませんから、相続の資格はありません。それでもなお、遺産の分割を求めてくる非嫡出子もいるのです。

他の相続人全員が分割を拒否すればいいのですが、「かわいそうだから少し分けてあげよう」「いや、その必要はない」などと争いになる可能性も考えられます。

また、ずっと行方不明になっていた兄弟が、遺産をもらえると聞いて急に戻ってくるケースもあるでしょう。
このような「想定外」が発生する可能性は、できるだけなくしておかなければなりません。

被相続人が認知症だった

高齢化の進行に伴って増えているのが、被相続人が認知症になるケースです。
判断能力に問題があると診断されれば、もはや遺言を残すことさえできません。

遺言書の内容を否定したいがために、「作成当時、すでに判断能力がなかったのではないか」と主張する相続人もいるのです。

相続トラブルの防ぎ方3:トラブルの悪影響を知る

相続トラブルが発生すると、家族や親族との関係は悪化し、決着がついても絶縁状態になってしまうことがあります。
また、何年も遺産分割協議が継続すれば、精神的に疲れてしまうでしょう。
これ以外にも、財産に関する具体的な弊害が発生する場合があります。主な悪影響は以下の2つです。

相続税の控除を受けられない

相続した遺産が一定額を超えると、相続税が課税されます。
ただし、すべての人に一律に課税されるわけではありません。

条件を満たす人は一定額が控除され、相続税が減額されるのです。
主に配偶者や障害者、未成年の相続人などが対象となります。

しかし、この控除を受けるためには、被相続人の死後10ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。
それまでに遺産分割協議が終わらなければ、控除が受けられないのです。

適切な理由があれば、控除が受けられる期間を3年まで延長することも可能ですが、協議が3年以上かかってしまう可能性は否定できません。

財産が使えない

遺産相続協議が終了するまでの間は、遺産を勝手に処分することはできません。
その遺産は、まだ誰の持ち物でもないからです。

せっかくのお金を使えず、土地や建物を活用することもできないのは大きなデメリットです。
不動産の固定資産税も発生し続けるため、ゼロどころかマイナスになりかねません。

相続トラブルの防ぎ方4:生前に十分な準備をする

相続トラブルを防ぐには、生前からの準備が最も大切です。相続人と被相続人が協力して、以下のような予防策を打ちましょう。

財産の目録を作成しておく

預金通帳や有価証券などは、決められた場所に保管して動かさないようにしましょう。
さらに、全財産の目録を作成しておけば、遺産がいくらあるのかを簡単に把握することができます。

遺言書を作成しておく

正確な遺言書を作成しておけば、遺産分割で揉める可能性は大きく減らせます。
財産がそれほど多くなくても、積極的に離婚書を作成するといいでしょう。
内容を保証し、改ざんや捏造を防ぐためにも、公証役場で公正証書遺言を作成するのがおすすめです。

事前に配分を伝えておく

法定相続分と異なる遺産分割を行いたい場合は、事前に内容を伝えておくのも1つの手段です。
「息子の妻はよく働いてくれたので、彼女にも同額の遺産を渡す」「次男は他のみんなに迷惑をかけてばかりいたので、配分を少なめにする」など、理由をしっかり説明しましょう。

遺留分を守る

法定相続人が最低限相続できる遺産の割合を「遺留分」といいます。
配偶者と子が2人いるなら、それぞれ総額の4分の1が遺留分です。

遺言書で「長男に全財産を相続させる」などと書かれていても、他の相続人が遺留分を主張すれば、その分だけは相続することができます。
トラブル防止のためにも、遺言書を作成する時は必ず遺留分を守ってください。

不動産の扱いを決めておく

不動産が簡単に分割できないことは、誰もが理解しているはずです。
「売却することはできないの?」「代償金を数年かけて支払ってもいい?」などといった内容を、十分に話し合っておきましょう。
厳密に分割しようとせず、ある程度譲り合うことも必要です。

不用意な生前贈与をしない

実態のはっきりしない生前贈与は、他の相続人に不信感を抱かせ、相続トラブルを招くだけです。
生前贈与の金額や理由は、相続人全員にわかるようにしておきましょう。隠し財産をこっそり渡すなどは論外です。

子の認知をしておく

非嫡出子であっても、認知をして法律上の親子関係になれば、遺産を相続することができます。
可能な限り生前に認知を行い、どうしても難しければ遺言で認知をしておきましょう。
配偶者に連れ子がいる場合は、その子の養子縁組も忘れないでください。

病院で検査を受けておく

遺言書を残しても、当時認知症だったことがわかれば効力は失われてしまいます。
遺言書を作成する前に病院で検査を受け、判断能力を認める診断書を出してもらってください。

お互いを信頼する

ある意味で最も重要なのは、相続人がお互いを信頼することです。
「兄は父の遺産を生前に使い込んでいたに違いない」「妹が自分の悪口を言いふらして、遺産の取り分を減らそうとしているらしい」。
このような思い込みがある状態で協議を行えば、トラブルが発生するのは目に見えています。

実際には何も問題がなくても、お互いが勝手に不信感を募らせれば、それ自体が大きな問題となるのです。
普段からコミュニケーションを取ってお互いを信頼し、火種を発生させないよう心がけましょう。
被相続人の側も、不自然な生前贈与や偏った内容の遺言書など、争いを加速させるような行為は慎んでください。

まとめ:相続トラブルを防ぎ、円満解決を目指そう

相続トラブルが泥沼化すると、仲のよかったはずの家族や親族が「敵」に変貌します。
残された家族が一生憎み合うようなことになれば、財産を残してくれた故人も浮かばれません。

家族が幸せに生活し、故人に安らかに眠ってもらうためにも、遺産相続は成功させる必要があるのです。
事前に十分な準備を行い、相続トラブルの発生を防ぎましょう。

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