高齢になってくると、アパートやマンションに入居することが困難になってきます。
とくに、1人暮らしの高齢者には部屋を貸したくないと考える大家さんは多いようです。
理由は明確で、孤独死などをされて長期間発見されなかったりすると、心理的瑕疵物件と呼ばれる事故物件扱いとなってしまう可能性が高いからです。
事故物件扱いになってしまうと、あらたな借り手を探すのが困難になってしまいますので、できれば一人暮らしの高齢者には部屋を貸したくないというのが大家さんの本音です。
「部屋を貸してくれないのならば、購入してしまえば文句ないだろう」ということで、最近人気になっているのが、シニア向け分譲マンションです。
分譲マンションであれば自分の所有物なので、誰にも文句を言われずにそこに住み続けることができるだろうと、誰もが思うに違いありません。
しかし、シニア向け分譲マンションの場合には、必ずしもそこに一生住み続けることができるとは限らないのです。
重度の要介護となってしまったりすると、退去を迫られることもあるのです。
自分の所有物なのに退去を迫られるというのは何とも理不尽に感じる人も多いと思いますが、ここが一般の分譲マンションとシニア向け分譲マンションの大きな違いなのです。
シニア向け分譲マンションと一般の分譲マンションではどこが違うのか?
マンションには大きく分けて賃貸と分譲がありますが、分譲の場合は自分自身が所有者ということになります。
このことは、シニア向けの分譲マンションでも変わりはありません。
似たようなシニア向けの住宅としてサービス付き高齢者住宅(サ高住)がありますが、こちらは賃貸住宅となりますので、物件を自己所有する形のシニア向けの分譲マンションとは明らかに異なります。
それでは、シニア向けの分譲マンションと一般の分譲マンションでは具体的に何が違うのでしょうか?
住民専用の共用施設がとても充実している
一般の分譲マンションの場合は、自分に分け与えられたスペースの中で独立して生活をすることになります。
ところが、シニア向け分譲マンションの場合には、住民が共同で使うことのできる施設が充実しています。
カラオケや麻雀ができる娯楽施設があったり、理容室やフィットネスルーム、天然温泉の大浴場などが用意されていたりします。
なかには、リゾートホテルのようにテニスコートやゴルフ練習場まで併設されているようなところもあります。
また、併設のレストランで食事をとることができたり、看護師が常駐して健康面でのケアをしてくれたりもします。
もちろん、施設内はすべてバリアフリーになっています。
高齢のおひとりさまであっても、安心して生活を送ることができるような仕組みになっているのがシニア向け分譲マンションということがいえます。
購入費用や管理費は一般のマンションにくらべて高額なことが多い
まさに、ホテル暮らしのような快適な生活を送ることも可能なシニア向け分譲マンションですが、購入費用や管理費は一般の分譲マンションとくらべて割高です。
共同の施設やサービスなどの充実度によってピンからキリですが、数千万円~数億円程度の購入費用が必要になります。
さらに、管理費や修繕積立、水道光熱費などの月額費用も、10万円~30万円程度かかるのが普通です。
分譲マンションなのに、賃貸マンションと変わらないほどの出費が毎月かかることになります。
さらに、施設内の理容室やレストランなどを利用すれば、それらの料金は別途でかかります。
ある程度の経済的な余裕のある高齢者でなければ、シニア向け分譲マンションに住むのは難しいかも知れません。
入居者は高齢者に限定されます
一般の賃貸マンションの場合は、高齢者が入居をすることが困難なことが多いですが、シニア向け分譲マンションの場合は、逆に若い人は入居することができません。
「シニア向け」ですから、文字通り高齢者を対象にしているわけです。
ただし、高齢者が対象とはいっても、すべてのシニア向け分譲マンションが60歳とか65歳以上を入居条件にしているわけではありません。
なかには、50歳くらいから入居できるところもあります。
シニア向け分譲マンションを購入するにあたって住宅ローンを組むことも可能ですが、あまり高齢ですと審査に通らないこともありますし、返済完了時の年齢が80歳までという条件があることも多いです。
住宅ローンを組んでシニア向け分譲マンションに住むことを計画しているのであれば、なるべく若いうちに入居をした方がいいかも知れません。
シニア向け分譲マンションは終の棲家とはならない可能性があります
自分でお金を出して購入したにもかかわらず、シニア向け分譲マンションは終の棲家(ついのすみか)とはならない可能性があります。
つまり、自分のマンションなのに、そこに一生住み続けることができないかも知れないということです。
シニア向け分譲マンションというのは、さまざまなサービスや共用施設を提供してくれますが、介護サービスはついていないのが普通です。
掃除や洗濯、外出時の付き添いなどのサービスを提供しているシニア向け分譲マンションもありますが、介護が必要になった人のケアまではしてくれません。
そのため、要介護度が高くなってしまうと、介護施設などに住み替えをしなければならなくなったりします。
自分で購入したマンションなのに、そこを出て行かなければならなくなるわけです。
何とも理不尽な感じがする人も多いと思いますが、シニア向け分譲マンションというのは、あくまでも身の回りのことがすべて自分でできる高齢者が対象の施設なのです。
退去してもシニア向け分譲マンションは資産として残ります
万が一、要介護度が高くなってしまって、シニア向け分譲マンションを退居させられることになったとしても、マンションそのものはあくまでも自分自身の所有物なので、資産として残ります。
サービス付き高齢者住宅なども、要介護度が高くなると退居させられることが多いですが、こちらは賃貸ですので何も残りません。
この点がシニア向け分譲マンションとサービス付き高齢者住宅の大きな違いです。
シニア向け分譲マンションというのはあくまでも自分の資産ですから、他の人に売却をすることもできますし、自分が亡くなったあとに子どもに相続をさせることもできます。
相続をした子どもが入居の条件を満たす年齢になったら、そこに住むことも可能になります。
あるいは、賃貸の形で他の高齢者の方に貸し出しをするということもできます。
ただし、シニア向け分譲マンションの場合はニーズが限られていますので、一般的なマンションのように売却をしたり貸し出しをしたりということが、スムーズに行かない可能性はあります。
在宅介護サービスが充実してくれば終の棲家となる可能性もあります
シニア向け分譲マンションを購入しても、現状ではそこに一生住み続けることができるかどうかは分かりません。
自分が重度の要介護者となるかどうかは誰にも分かりませんので、そこに一生住み続けることができるかどうかは、まさに運しだいということになります。
ただし、将来的に在宅介護サービスが充実してくれば、状況は変わってくるかも知れません。
重度の要介護者となってしまった場合、シニア向け分譲マンション側としては「介護サービスを提供することができない」という理由で退去を求められるわけです。
在宅介護サービスを利用することによって介護の問題がクリアできれば、そのまま終の棲家として住み続けることができるようになる可能性はあります。
とはいえ、介護業界は慢性的な人手不足に悩まされているという現実がありますので、在宅介護サービスがこれから充実してくるのかどうかは、不透明な部分もあります。