お墓

夫の墓には入りたくない!~夫婦別々にお墓に入る「死後離婚」の人が増えています

自分が死んだら夫とは別の墓に入りたいと考えている妻たちが、最近では増えてきているようです。

夫婦で別々のお墓に入ることを「死後離婚」などと呼んだりします。

ある保険ショップが40歳以上の既婚男女にアンケートをしたところ、既婚女性の4人に1人は配偶者と同じ墓には入りたくないと回答したそうです。

確かに生前に夫婦仲が悪くて「死んでまでも夫と一緒にいたくない」とか「あの意地悪だった姑と同じお墓に入るなんて勘弁してほしい」などと考える女性は多いのでしょう。

しかし、夫とは別のお墓に入りたいと考えている妻たちのなかには、それとはまったく別の理由があることも少なくないようです。

夫婦仲はものすごくよかったのに、あえて夫の墓には入りたくないと考えている人も増えているのです。

いったい、なぜ彼女たちは夫とは別々のお墓を希望するのでしょうか?

そもそも先祖代々のお墓があるのは日本だけ?

妻たちが入りたくないと主張する夫のお墓というのは、要するに「夫の先祖代々の墓」であるケースが少なくありません。

日本では先祖代々のお墓に子孫が入るというスタイルがずっと続いてきました。

しかし、これは世界的にみると一般的ではありません。

海外では、お墓というのは基本的に1人対して1基作られ、「○○家のお墓」ではなく「○○さんのお墓」ということになります。

もちろん、アメリカなどの海外でも先祖代々のお墓を持っている人はいますが、一部のお金持ちであったり由緒ある家系の人だけだったりします。

日本という国に暮らしていると、長い間の風習によって家族が同じお墓に入ることがあたり前のように感じてしまいますが、世界的にみれば決してあたり前ではないわけです。

そもそも夫婦というのは血のつながっていない赤の他人なわけです。

親子は自分の血が半分つながっていますが、夫婦というのは他人同士が戸籍上一緒になったというだけの存在です。

親子の縁は簡単には切れませんが、夫婦の縁というのは離婚届という紙切れ1枚で簡単に切れてしまう程度のものです。

夫の先祖とはまったく血のつながっていない妻が、たまたま夫と結婚して一緒に暮らしていたからという理由で、もともと他人である夫の先祖代々のお墓に入ることに抵抗を感じてもおかしくありません。

家族といっても、いまや核家族があたり前になっていますので、妻が夫の両親や祖父母と暮らす機会はほとんどなくなっています。

一度もいっしょに暮らしたとこのない人たちと、お墓の中でいっしょに過ごさなければならないというのは、考えてみればおかしな話です。

これからは、日本でも個人単位でのお墓を考える時代になっていくのかも知れません。

生まれ育った実家のお墓に入りたいと考える妻たち

夫とはすごく仲が良かったにもかかわらず、あえて夫の墓には入らずに実家の先祖代々のお墓に入りたいと考えている妻たちもいるようです。

夫の先祖代々のお墓に入っているのは、血のつながっていない他人ばかりですが、自分が生まれ育った実家のお墓であれば、自分と血のつながった本当のご先祖様がそこに眠っているわけです。

仲のよかった夫とは離れ離れになってしまうけれども、あえて自分を生み育ててくれた両親や子どもの頃にかわいがってくれた祖父母と同じお墓に入りたいと考える人がいてもおかしくありません。

夫婦がまったく別々のところに生まれ育って、やがて二人が巡り合って結婚生活を送り、そして最後はまたお互いが生まれ育ったところに返っていくという考え方です。

現代人はかつてのように「しきたり」に縛られるということが少なくなっています。

こうした考えで、自分が入るお墓を納得のいく形で選択する人がこれから増えて行くのかも知れません。

残された人にしっかりと意思を伝えておくことが大切

夫婦別々のお墓に入ることを「死後離婚」などと呼んだりしますが、実際の離婚とは異なりますので、別々のお墓に入ることそのものは法的にはまったく問題ありません。

しかし、自分が夫とは別のお墓に入りたいと思っていても、そのことを誰かに伝えておかなくては希望通りにはなりません。

死んでしまったあとに、自分の意思を伝えることはできないからです。

自分の葬儀をしてくれる子どもたちに意思を伝えるのであれば、エンディングノートに残しておくのも一つの方法です。

ただし、エンディングノートに夫とは別の墓に入れてほしいと書き残したとしても、子どもたちが必ずしもその通りに実行してくれるという保証はありません。

なぜなら、エンディングノートには何の法的な効力もないからです。

それなら遺言状の形で残しておけばいいのかというと、それも正しくはありません。

遺言状に書かれた内容で法的な効力が発生するのは、相続に関することや婚姻関係にない相手との子どもの認知など、限られた項目だけなのです。

残念ながら、葬儀のやり方やお墓に関することを遺言状に書き残したとしても、そのことについて法的に従わせるということはできないのです。

子どもたちが、「両親は同じお墓に入れよう」と判断すれば、そうなってしまう可能性があるわけです。

それならば、生前に自分専用のお墓を建ててしまって、葬儀も業者に生前予約してしまえばいいだろうと考える人もいると思います。

しかし、事前に子どもたちに相談をして自分の考えをつたえておかないと、実際の葬儀のときに業者ともめることになります。

夫婦が別々のお墓に入ることで子どもに迷惑をかけてしまう可能性も

夫婦が自分たちの考えで別々のお墓に入るのは自由ですが、子どもたちにとっては迷惑と感じるかも知れません。

なぜなら、お父さんのお墓とお母さんのお墓を別々に管理しなければならないというのは、かなりの負担になるからです。

もちろん、夫婦別々のお墓といっても、どちらも同じ霊園内にあるのであればそれほど大きな負担にはならないでしょう。

しかし、それぞれのお墓が離れている場所にあると、大変なことになります。

たとえば、東京に住んでいる子どもたちが、父親のお墓参りのために山形県まで行き、母親のお墓参りのために兵庫県まで行くなどというのは現実的ではないでしょう。

交通費だけでも大変な出費になってしまいます。

また、墓地の管理費や檀家料なども別々に負担しなければならなくなります。

どうしても夫婦別々のお墓に入りたいと考えるのならば、せめて残された人に迷惑をかけない方法を選択すべきでしょう。

永代供養墓を生前予約しておくという選択肢もあります

残された人に迷惑をかけずに夫婦で別々のお墓に入る方法の1つに、永代供養墓を生前から予約をしておくという選択肢があります。

永代供養墓であれば、その後のお墓の管理などは寺院や霊園などにすべてお任せできますし、法要も33回忌くらいまでは行ってくれるのが普通ですので、残された人に一切の負担をかけることはありません。

また、永代供養墓の場合は、お墓の代金だけではなく、その後の管理費や法要などの費用もすべて含んで契約をしますので、残された人たちに経済的な負担をかけるということもありません。

ただし、こういった方法を生前予約する場合でも、残されることになる人とはしっかりと話し合いをしておくことが大切です。

本人は残された人に迷惑をかけたくないと思ってそういう方法を選択したとしても、子どもたちは「お母さんのお墓参りをしたい」と考えているかも知れません。

しかも、永代供養墓の場合、三十三回忌の法要が終わったあとに、遺骨を合祀墓の方に移してしまうのが一般的です。

遺骨を合祀墓に移してしまうと、あとから個別の遺骨を取り出すことは不可能になります。

そういったことをしっかりと残される人に説明をして、納得をしてもらえるのであれば、夫とは別に永代供養墓に入るという選択肢もありだと思います。

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