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墓じまいの方法を解説。正しく進めてトラブル回避!

墓じまいの方法を解説。正しく進めてトラブル回避!

ご先祖様から受け継いだお墓は、大切に守っていく必要があります。しかし、お墓の継承者が見つからなかったとしたら、皆さんはどうしますか? 管理者を失ったお墓は無縁墓となり、朽ち果ててしまうかもしれません。それを防ぐ手段のひとつが「墓じまい」です。ここでは、墓じまいの方法やトラブルの予防法について解説します。

墓じまいの方法1:意味を知り、必要性を検討する

墓じまいは、先祖代々のお墓を撤去する行為です。遺骨はお墓から取り出し、家で保管するか別の埋葬先を探すことになります。なぜ、大切なお墓を撤去しなければならないのでしょうか。主な理由を見ていきましょう。

継承者がいない

日本は少子化が進行しており、お墓の継承者を確保しにくくなりました。継承者がいなくなれば、お墓の清掃や修繕ができなくなり、荒れ放題になってしまうでしょう。これでは、ご先祖様の霊を弔うことができません。このような「無縁墓(無縁仏)」は全国で増加しており、社会問題になっているのです。

また、毎年の管理費の支払いもストップしてしまうため、法律上の条件を満たせばお墓が撤去されてしまう可能性もあります。遺骨はお寺の合葬墓に入れられるケースが多いのですが、悲しい結末であることに違いはありません。このような事態を防ぐためにも、自分に万一のことがある前に、墓じまいをしておく必要があるのです。

通いづらく管理が難しい

お墓は自由に持ち運べるものではありません。転勤や結婚のために引っ越しても、お墓は元の場所に残ったままです。遠方からお墓の様子を見に行くのは、大きな負担となるでしょう。かといって、長い間放置すると「ご先祖様に申し訳ない」と親族から批判されることもあります。

可能であれば、引越し先で新たなお墓を見つけるべきなのですが、なかなか簡単にはいきません。そのような場合、墓じまいだけでも先にすませておけば、余裕を持ってお墓を探すことができるのです。

管理費用をなくしたい

お墓を持っていると、管理費を支払う必要があります。金額は年間1万円程度ですが、大きなお墓や有名なお寺のお墓だと、5万円~10万円ほどかかってしまう場合もあるのです。管理費用を負担に感じるなら、墓じまいをした方がいいかもしれません。浮いたお金でもっと安いお墓を購入することもできます。

他の埋葬形態に魅力を感じた

近年では、さまざまな埋葬形態が新たに登場しました。屋内型でお墓参りのしやすい納骨堂、自然に囲まれて眠れる樹木葬、大海原と一体になれる散骨などです。これらに魅力を感じる親族が多いなら、たとえお墓の管理に不便を感じていなくても、墓じまいをして埋葬形態を切り替えてもいいでしょう。

墓じまいの方法2:手順を知る

墓じまいは、遺骨を取り出せば終わるわけではありません。墓地のルールやマナー、そしてご先祖様の供養のためにも、正しい手順で行う必要があります。詳しい流れを知っておきましょう。

(1)管理者に相談する

墓地の管理者は、お墓の持ち主に代わってお墓を守ってくれています。墓じまいをする時は、必ず管理者に相談しましょう。何の相談もなく墓じまいを進めるのは大変失礼ですし、墓地の管理規約に触れる場合もあります。トラブルを避けるためにも、早めに相談してください。管理事務所があればそこへ行き、なければお寺や管理会社に連絡しましょう。

なお、墓じまいをするだけなら、役所への届け出は必要ありません。届け出なければならないのは、お墓を別の場所に移す(改装する)場合です。当面は遺骨を家で保管しておく予定なら、慌てて役所に相談しなくてもいいでしょう。

(2)魂抜きを行う

墓石はただの石ではなく、ご先祖様の家です。そのまま撤去・廃棄するわけにはいきません。そこで、僧侶を呼んで魂抜き(閉眼供養、閉眼法要)をしてもらいましょう。これで墓石は「ただの石」に戻り、撤去しても問題なくなります。どのお寺の檀家にもなっていない場合は、墓地の管理者に相談して僧侶を派遣してもらってください。

(3)お墓を撤去する

お墓を購入しても、お墓の建っている土地までが自分のものになるわけではありません。墓地はお寺や管理会社のものであり、利用者は土地を借りているだけなのです。遺骨を取り出したら、責任を持って墓石を撤去し、更地に戻す必要があります。

そこで、魂抜きが終わったら、石材店に撤去を依頼しましょう。墓地によっては、提携先の石材店に一任している場合もあるので、相談の段階で聞いておくのがおすすめです。特に制限がなければ、自分で石材店を探すか、管理事務所に候補を紹介してもらってください。

墓じまいの方法3:費用を知る

墓じまいには、諸々の費用がかかります。すべて合わせるとそれなりの金額になるため、何も知らずに進めると驚くかもしれません。主な費用は以下の通りです。

僧侶へのお布施

魂抜きを依頼した際、僧侶に支払う費用です。相場は1万円~5万円ほどなので、僧侶やお寺との関係性も考慮して包むといいでしょう。遠方から来てもらった場合は、お車代も含めて多めに包むのがマナーです。

お墓の撤去費用

石材店にお墓の撤去を依頼するための費用です。お墓の規模にもよりますが、10万円~30万円ほどかかります。専有面積1平方メートルにつき、10万円ほどかかると考えてください。大きなお墓であるほど高額になるので、しっかりと見積もりを取りましょう。

離檀料

墓じまいをするということは、そのお寺の檀家をやめる(離檀する)こととほぼ同義です。そのため、今までの感謝の気持ちを込めて、法要3回分程度のまとまったお布施をお渡しするのがマナーとされています。相場は10万円~20万円ほどです。

墓じまいの方法4:その後の対応を考える

墓じまいをしたあとは、取り出した遺骨の扱いを決める必要があります。また、自分自身の入るお墓も探さなければなりません。どのような方法が考えられるでしょうか。

手元供養をする

遺骨を仏壇や祭壇に置き、自宅で供養する方法です。法律上、遺骨を自宅で保管するだけなら問題はないので、役所の許可などは必要ありません。いつでも遺骨に手を合わせられるのがメリットですが、親族や友人がお参りしにくくなってしまいます。ずっと手元供養でいいのかどうか、真剣に検討しましょう。

新たなお墓を探す

「やっぱり遺骨はお墓に安置しておきたい」という場合は、新たなお墓を探しましょう。少なくとも、以前のお墓よりは条件のいい墓地を見つける必要があります。管理費や家からの通いやすさ、墓地の環境などを考慮して決定してください。

納骨堂や樹木葬に切り替える

継承者の不在を理由に墓じまいをしたなら、次のお墓は継承や維持管理の必要がないものにしなければなりません。そこで、納骨堂や樹木葬を利用してみましょう。どちらも永代供養が基本で、維持管理はお寺や管理会社に任せられます。従来型のお墓に比べ、費用が格段に安くすむのもメリットです。

散骨をする

遺骨を砕いて海にまく散骨は、自然に還る様子がイメージでき、墓地も必要ないため人気が高まっています。ご先祖様の遺骨を散骨するのは少し勇気がいりますが、自分自身の埋葬方法としては選択肢に入れていいでしょう。

墓じまいの方法5:トラブルの予防法を知る

墓じまいは、継承者の不在や維持管理の負担など、やむをえない理由で行うことが大半です。しかし、焦って墓じまいを行うと、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。ご先祖様に安らかに眠ってもらうためにも、トラブルの予防策を知っておきましょう。

親族とのトラブル

墓じまいの際に最も注意が必要なのは、親族とのトラブルです。先祖代々のお墓を撤去することに抵抗のある人は多く、継承者不足などの事情を知っていても反対される場合があります。何の相談もなく撤去すれば、親族中から批判されるかもしれません。また、墓じまいに同意してもらえても、費用の負担をめぐってトラブルになるケースもあります。

そのため、墓じまいを検討しているなら、家族や主だった親族に必ず相談しましょう。「私がお墓を継承します」と名乗り出る人もいるかもしれません。お墓の現状を知ってもらい、自分の考えを周囲に理解してもらうことが大切です。

お寺とのトラブル

墓じまいについてお寺に相談すると、法外な離壇料を請求される場合があります。最近は少子化の影響で檀家が減少しており、お寺も経営が楽ではありません。そのため、檀家をやめさせまいとして高額の離壇料を請求するわけです。やむをえず支払ってしまうケースも実際に発生しています。

とはいえ、離檀料はあくまでも「お礼の気持ち」であり、法律で決められた費用ではありません。離檀料の支払いで困ったら、弁護士や行政書士に相談してみましょう。適切な金額まで減額されるか、まったく支払わなくてよくなる可能性が高くなります。

石材店とのトラブル

石材店の中には、「お得意様」のお寺や墓地以外から撤去作業を依頼された時、法外な費用を請求する悪質な業者もいます。お墓の撤去を依頼する時は、必ず複数の業者から見積もりを取って比較しましょう。明らかに相場から外れた見積もりを出してくる業者は、避けるようにしてください。お寺から石材店を紹介された場合も同様です。

まとめ:墓じまいの正しい方法を知り、問題を解決しよう

墓じまいは、今後も多くの人が検討することになると考えられます。お墓参りに行った時、明らかに手入れのされていない朽ち果てたお墓を見て、「うちもああなるのではないか」と心配になる人もいるでしょう。適切な墓じまいを行えば、ご先祖様を悲しませることもなくなります。将来に備え、墓じまいの正しい方法を知っておいてください。

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