自動搬送式納骨堂という言葉を耳にしたことのある人も少なくないでしょう。
しかし、それがいったいどういったものなのかを具体的に知っている人はそれほど多くないと思います。
納骨堂という言葉はなんとなくイメージできても、「自動搬送」という言葉に違和感をおぼえる人もいると思います。
ここでは、自動搬送納骨堂がいったいどういうものなのかという点について、詳しく解説してみたいと思います。
また、一般的なお墓ではなく、自動搬送式納骨堂を選ぶことのメリットやデメリットなどについても書いてみたいと思います。
そもそも自動搬送式納骨堂とはどのようなものでしょうか?
まずは、一般的なお墓と自動搬送式納骨堂の違いを考えてみたいと思いますが、そもそも「納骨堂」というのは何でしょうか?
埋墓法によりますと、納骨堂というのは「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」ということになります。
つまり、本来であればお墓に納骨すべき遺骨を、屋内の施設でお預かりするためのスペースを納骨堂と呼んでいるわけです。
納骨堂には、ロッカー式のものから仏壇型などさまざまな種類があります。
一般的な石のお墓を建てるのにくらべると、費用的にも安く済み、ロッカー式の場合ですと、永代供養付きで5万円程度から利用することが可能です。
自動搬送式納骨堂も、そういった納骨をするための屋内施設の1つですが、「自動搬送」という言葉が何を意味するのかよく分からないという人も多いことでしょう。
自動搬送式納骨堂を理解するためには、立体駐車場をイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。
お参りをする人が遺骨のあるスペースまで歩いて行くのではなく、立体的な格納庫に納められている遺骨が、お参りをする人のところまで自動で搬送されてくる仕組みになっているのです。
そのため自動搬送式納骨堂は、限られたスペースを有効に活用することができるわけです。
施設によっては、数千基の遺骨を安置することが可能なところもあるようです。
また、限られたスペースに多くの遺骨を安置することができますから、自動搬送式納骨堂は都市部に作られることが多くなっています。
自動搬送納骨堂はどのような方法でお参りするのか?
自動搬送式納骨堂にもさまざまなタイプがありますが、ここでは代表的なタイプで参拝をするときの流れについて書いてみたいと思います。
自動搬送式納骨堂は、ICカードなどで遺骨を管理しているのが一般的です。
専用のICカードを読み取り部分にかざすことによって、遺骨が参拝ブースまで自動的に運ばれてきます。
参拝ブースでは、焼香をすることもできますし、タッチパネルを操作することで、故人の写真をみたり音声を聞いたりということもできたりします。
お花や線香を施設内で買い求めることができるところも多いですので、そういった施設の場合ですと、手ぶらでお参りにいくことも可能になります。
永代供養や法要・葬儀などさまざまなニーズに対応
自動搬送式納骨堂を運営している施設では、ただ単に遺骨を管理するだけではなく、さまざまなニーズに対応しているところが多くなっています。
四十九日や一周忌などの法要を行ったり、会食をしたりすることが可能な施設もあります。
また、なかには葬儀を行うことができる施設などもあるようです。
自動搬送式納骨堂を利用したいと考えている方は、その施設がどこまで対応しているのかについて、事前にしっかりとリサーチをしておくようにするといいでしょう。
永代供養付きが一般的なので遺骨の継承者がいなくても安心
自動搬送式納骨堂の場合、永代供養がセットになっていることがほとんどですので、遺骨の継承者がいない場合であっても心配する必要はありません。
ただし、永代供養といっても、文字通り永代にわたって供養をしてくれるわけではありません。
契約によっても異なりますが、13回忌、17回忌、33回忌あたりまでの供養を遺族に代わって行ってもらえるというのが一般的です。
また、自動搬送式納骨堂の場合、宗旨や宗派を問わないというところも多く、そういった施設だと檀家になることを強要されることもありませんので安心です。
自動搬送式納骨堂を利用するためにかかる費用
一般的な石のお墓を建てるときには、墓石代のほかに、霊園や寺院に支払う永代使用料や管理費などがかかります。
自動搬送式納骨堂の場合にも、同じように永代使用料や管理費がかかります。
自動搬送式納骨堂の永代使用料の相場としては、立地条件や施設の設備・規模などによって変わってきますが、遺骨一基あたり50万円~100万円以上になるかと思います。
一般の墓地の永代使用料の場合には、いわゆる墓地を使わせてもらうための権利料という形になりますが、自動搬送式納骨堂の場合には、遺骨を納める厨子や骨壺、故人の家名を刻んだ名阪、永代供養料などすべてを含んだ費用になります。
自動搬送式納骨堂の場合、墓石を建てる必要はありませんから、一般的な石のお墓を建てるのにくらべると、費用的にはかなり割安であるといえます。
自動搬送式納骨堂を利用するにあたって必要になる費用は永代使用料だけではありません。
管理費として、年間で1万円~2万円かかるのが普通です。
この管理費に関しては、一般の石のお墓にくらべて高めに設定されていることが多いです。
どうしても設備の維持管理など、メンテナンスにそれなりのコストがかかってしまうからでしょう。
自動搬送式納骨堂を利用することのメリットとデメリット
都市部を中心に注目をあびている自動搬送式納骨堂ですが、一般のお墓とくらべてさまざまなメリットがあります。
また、それと同時にいくつかのデメリットもあります。
ここでは、実際にどういったメリットやデメリットがあるのかを具体的にみて行くことにしましょう。
気軽に参拝できる点や費用の安さがメリットとなります
自動搬送式納骨堂は、一般的なお墓と異なり、限られたスペースのなかにたくさんの遺骨を納めることができます。
広い土地を必要としないことから、都市部につくられていることが多く、参拝にあたって交通の便がいいという点が大きなメリットといえます。
一般的な郊外にあるお墓にお参りに行く際は、掃除用具やお花、お供え物などを持参することになりますので、クルマを利用しないと不便です。
参考記事:お墓参りをするときの正しい作法と当日に持参すべき物
しかし、都市部にある自動搬送式納骨堂であれば、手ぶらで電車などを利用して参拝をすることができますので、非常に便利です。
参拝そのものも、墓石の手入れや落ち葉拾いなどをする必要がないのでとても楽です。
また、自動搬送式納骨堂の場合は、墓石を購入する必要がなく、基本的には永代使用料と管理費だけを負担すればいいことになりますので、費用的に一般のお墓にくらべて安くなるという点も大きなメリットです。
さらに、自動搬送式納骨堂は屋内にありますので、参拝するときに天気を気にする必要がないという点や、多くの施設では永代供養つきとなりますので、お墓の継承者の心配がないなどのメリットもあります。
建物の老朽化の問題や参拝ブースが共同という点がデメリット
自動搬送式納骨堂には、もちろんメリットばかりではなくデメリットもあります。
一般のお墓の場合には、墓地そのものがなくなってしまうということは基本的にありません。
しかし、自動搬送式納骨堂はビルの中にありますから、将来的には建物の老朽化の問題が発生します。
分譲マンションなどのように、いずれは建て替えを検討しなければならなく時期がくることが予想されますので、そういった点をデメリットとして不安に感じる人もいるでしょう。
自動搬送式納骨堂の場合、永代供養が13回忌や17回忌までとなっている施設が多いのも、そういった老朽化の問題を考慮してのことだと思われます。
また、建物火災などによって、遺骨が焼失してしまう可能性があるという点も、不安材料の1つといえるでしょう。
その他のデメリットとしては、共同で使う参拝ブースの問題があります。
自動搬送式納骨堂の場合、限られたスペースのなかにたくさんの遺骨を納めることができますが、参拝ブースの数は限られています。
そのため、お盆やお彼岸の時期になるとどうしても参拝ブースが混雑しやすくなります。
また、参拝ブースを他の遺族の方と共同で使うことになるため、実際に参拝をしても何か物足りなさを感じるという方も人もいるかも知れません。