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改葬の方法を紹介。理想の墓地にお墓を移すために

改葬の方法を紹介。理想の墓地にお墓を移すために

皆さんの家のお墓は、自宅からどのくらい離れていますか? 散歩の途中に寄れるくらい近い人もいれば、ちょっとした旅行になってしまうほど遠い人もいるでしょう。あまりにお墓が遠いと維持管理が大変で、気軽に清掃もできませんよね。それを解決するための方法が「改葬」です。ここでは、改葬の方法や注意点について解説します。

改葬の方法1:自分が改葬すべきか考える

改葬とは、お墓を撤去して別の場所に新しいお墓を作り、遺骨を移すことをいいます。つまるところ、お墓の引っ越しですね。現在は、さまざまな理由によって改葬を検討する人が増えています。主な改葬の理由を見ていきましょう。

お墓を管理しやすい場所に移したい

先祖代々のお墓が遠方にあると、維持管理の負担がとても大きくなります。やがて足が遠のき、放置してしまうケースもあるでしょう。これではご先祖様に申し訳が立ちません。改葬してお墓を自宅の近くに移せば、管理がとても楽になり、お墓参りに気軽にできるようになります。

別の埋葬形態に変えたい

近年では、納骨堂や樹木葬など、新たな埋葬形態が注目されています。従来のお墓からこれらの埋葬形態に切り替えるのも、改葬の一種です。永代供養が基本なので、お墓の継承者がいない場合に役立ちます。

管理費の安いお墓に変えたい

お墓を持っていると、毎年管理費を支払う必要があります。相場は年間で1万円程度ですが、墓地によってはとても高額な場合もあり、負担は小さくありません。より管理費の安いお墓に改葬すれば、一時的に大きな出費になっても、将来的にはお金の節約になる可能性があります。

無宗教のお墓にしたい

お寺の檀家になっていると、お寺との関係にいろいろ気を使う必要があります。住職と考えが合わず、トラブルを抱えてしまうケースも少なくありません。檀家をやめて無宗教の墓地に改葬すれば、お寺との関係で悩むこともなくなります。「改宗したので、その宗派のお寺の檀家になりたい」という場合も、改葬が必要になるでしょう。

以上のような状況の人は、改葬を検討する価値があるといえます。お墓の清掃や管理費が負担になっていないか、よく振り返ってみましょう。

改葬の方法2:改葬の種類を知る

改葬の方法には、いくつかの種類があります。主な方法は以下の4つです。順番に特徴を見ていきましょう。

元のお墓を撤去し、新しいお墓に遺骨を移す

最も一般的な改葬の方法です。元のお墓があった場所は更地に戻し、墓石も閉眼供養(魂抜き)をした上で石材店に処理してもらいます。

元のお墓から墓石と遺骨を移す

新しい墓石を購入するのではなく、元のお墓の墓石をそのまま使う方法です。墓石の購入費は不要になるものの、元の場所を更地に戻さなければならない点は変わりません。墓地によっては墓石の移動が不可能だったり、墓石の輸送費などでかえって高くついたりする場合もあるため、十分な検討が必要です。墓石に強い思い入れがある場合に選択しましょう。

遺骨の一部を移す

新しいお墓を購入し、元のお墓の遺骨を一部だけ移す方法です。新しいお墓ができるまで、実家のお墓に一時的に納めていた場合などに行います。元のお墓はそのまま残るため、更地に戻す必要はありません。役所での手続きは、移動させる遺骨に関してのみ必要です。

分骨する

新しいお墓を購入し、元のお墓の遺骨を分骨する方法です。前の項目の方法と似ていますが、こちらは「同じ人の遺骨を別のお墓に分ける」という点で大きく異なります。法律でいう「改葬」に当たらないため、役所での手続きは必要ありません。ただし、元の墓地の管理者から「分骨証明書」を発行してもらう必要があります。

なお、改葬の定義は「お墓(遺骨)を別の場所に移す」ことです。新しいお墓を用意せず、元のお墓を撤去するだけの場合は、一般的に「墓じまい」と呼ばれます。分骨と同様、墓じまいも「改葬」には当たらないため、役所での手続きは必要ありません。墓地の管理が大変な時は、ひとまず墓じまいだけすませておくのも1つの手段です。

改葬の方法3:改葬の正しい手順を知る

改葬は、許可なく自由に行っていいわけではありません。改葬の方法は、墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)によって定められており、正しい手続きを踏む必要があるのです。改葬の流れを知っておきましょう。

(1)新しい墓地を探す

まずは新しい墓地を探しましょう。自宅からの距離など、希望の条件を満たせる墓地を選んでください。

(2)受入証明証をもらう

新しい墓地と契約したら、管理者に受入証明証(墓地使用許可証)を発行してもらいます。これは、改葬の受け入れ先があることを証明する大切な書類です。

(3)工事契約を行う

新しいお墓のデザインを決め、石材店と工事契約を行います。工事には3ヶ月程度かかるため、余裕を持って発注してください。

(4)改葬許可申請書を用意する

元のお墓のある自治体の役所へ行き、「改葬許可申請書」をもらいます。最近はインターネットでダウンロードできることが多いので、自治体の公式サイトを探してみましょう。改葬許可申請書に必要事項を記入したら、元のお墓の管理者に提出し、記名捺印をもらってください。失礼のないよう、必ず事前に連絡・相談しておきましょう。

(5)改葬許可証をもらう

管理者に記名捺印をもらったら、改葬許可申請書を自治体の役所に提出しましょう。受理されれば、「改葬許可証」を発行してもらえます。自治体によっては、改葬先の受入証明証を一緒に提出しなければならないこともあるため、事前に確認しておいてください。

(6)遺骨を取り出す

元のお墓の管理者に改葬許可証を提示し、許可を得て遺骨を取り出します。この際に閉眼供養を行うのが一般的です。墓地の管理者やお寺に手配してもらいましょう。遺骨を取り出したあとのお墓は、石材店に依頼して更地に戻し、管理者に確認してもらってください。

(7)遺骨を安置する

新しいお墓に遺骨を納めるまでの間は、自宅で遺骨を保管します。風呂敷などに包み、仏壇に安置するなどして大切に扱いましょう。

(8)新しいお墓に遺骨を納める

新しいお墓が完成したら、管理者に改葬許可証を提出し、遺骨を納めます。この時、開眼供養(魂入れ)を行うのが一般的なので、閉眼供養と同様に手配してもらってください。なお、新しいお墓のある自治体の役所に、改葬許可証を提出する必要はありません。

改葬の方法4:注意点を知り十分に検討する

改葬の方法自体は、それほど難しいものではありません。しかしながら、先祖代々のお墓を移動させるからには、一定の配慮が必要になります。以下の点に注意しましょう。

家族、親族とよく相談する

「長年受け継いできたお墓を移動させるのはよくない」と、強い抵抗を示す人もいます。自分自身はお墓が近くなって便利でも、別の人は逆にお墓参りがしにくくなるかもしれません。改葬については家族や親族と相談し、十分な時間をかけて検討しましょう。もしかすると、親族が管理を引き受けてくれ、改葬の必要がなくなるかもしれません。

費用対効果を考える

改葬には、以下のような費用がかかります。

新しいお墓の購入費 150万円~300万円
元のお墓の撤去費 10万円~30万円
お寺に支払う離檀料 10万円~20万円
閉眼供養や開眼供養の際のお布施 それぞれ1万円~5万円
お墓の輸送費用(墓石も移す場合) 20万円~30万円

すべて合計すると、最低でも200万円は必要です。決して安い金額ではありませんから、費用に見合うメリットがあるかをよく考えてください。改葬について親族と合意した場合は、誰がいくら負担するかも決めておくといいでしょう。

改葬後の埋葬形態を検討する

先祖供養や費用の問題を考慮すると、改葬はそう何度もできるものではありません。せっかく改葬したのに、短期間でまた不満点が出てくれば、ご先祖様を弔う気持ちも薄れてしまいます。従来型のお墓だけにこだわらず、納骨堂や樹木葬墓地なども候補に入れ、埋葬のあり方そのものについて検討してみましょう。

まとめ:改葬の方法と注意点を理解し、成功させよう

改葬を行った人の多くは、その結果に満足しています。「ずっと同じ場所に眠っていた遺骨を移動させるなんて、ご先祖様に申し訳ない」と思う人もいるかもしれませんが、大切なのは弔いの気持ちです。メリットとデメリットを理解し、正しい手順を踏んで改葬すれば、ご先祖様も納得してくれるでしょう。まずはご家族と相談してみてください。

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