「自分が生きている間に、自分のお墓を購入するなんて縁起でもない」
そんなふうに考える人が、これまでは普通でした。
ところが最近では、あえて生前に自分のお墓を購入しようと考える人が増えています。
自分のお墓に対してこだわりのある人や、残された家族に自分のお墓のことで心配をかけたくないといった人などが、積極的にお墓の生前購入をするようになっています。
ちなみに、生前にお墓を購入するのは、決して縁起の悪いことではありません。
生きているうちの自分のお墓を建てることを「寿陵(じゅりょう)」といいますが、この寿陵というのはもともと中国から伝わったもので、縁起のいいこととされているのです。
日本の歴史上の人物では、聖徳太子が寿陵を建てたといわれています。
ここでは、お墓を生前購入するときの、メリットやデメリットについて考えてみたいと思います。
お墓を生前購入することのメリットを考える
お墓を生前に購入する人が増えているということは、そこに何らかのメリットを感じている人が多いということになります。
実際に、自分が生きている間にお墓を建てるという行為には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
自分自身の納得のいくお墓を建てることができる
お墓の生前購入のメリットとして、まず一番にあげることができるのが、自分自身の納得のいくお墓を建てることができるという点です。
自分のお墓にこだわりを持っている人にとっては、お墓を建てる場所や墓石のデザインなどを、すべて自分で決めることができるというのは、大きな魅力となるに違いありません。
また、残された人たちが、故人のためにどのようなお墓を建てらいいかで、頭を悩ませるということもなくなります。
残された家族にさまざまな負担をかけなくて済む
生前にお墓を購入することで、残された家族に負担をかけなくて済むという点も、大きなメリットということがいえます。
あらたに墓地を購入して、そこに墓石を建てるとなると、平均的なものでも150万円~200万円くらいの費用がかかってしまいます。
あらかじめ自分のお墓を用意しておけば、いざというときに家族に負担をかけなくて済むわけです。
また、費用の面だけではなく、墓地を購入してお墓を建てるまでには、さまざまな負担が生じます。
残された家族にとっては、お墓探しから墓石業者との打ち合わせなどを、精神的につらい時期にやるのは気が重いものです。
事前に自分のお墓を建てておけば、あとはそこに納骨するだけですから、家族の負担は非常に軽いものになります。
相続税の節税になるというメリットもあります
わざわざ生前に自分のお墓を建てなくても、相続でお墓を建てる分の費用を残してやれば問題ないのではないか、と考える人も少ないないでしょう。
しかし、自分のお墓を建てる費用を相続で残した場合には、相続税の対象になってしまいます。
ところが、事前にお墓を建ててあれば、お墓そのものには、相続税は発生しません。
お墓や仏壇などの祭祀財産は、相続税の対象にならないのです。
そのため、生前に自分のお墓を建てておけば、相続税を節約できて、結果的に家族に少しでも多く財産を残してあげることができることになります。
ただし、相続税が発生するのは、遺産の額が「3000万円+相続人の数×600万円」以上の場合となります。
遺産の総額がそれ以下の人の場合には、そもそも相続税が発生しませんので、生前にお墓を購入することの節税メリットはありません。
また、お墓を建てるためにローンを組む場合は、節税に関して注意をしなければならないことがあります。
ローンでお墓を建てて、完済をする前に本人が亡くなったしまったときには、ローンの債務を控除することはできなくなってしまうのです。
一般的なローンの債務の場合は、相続財産から差し引きをすることができますが、お墓などの祭祀財産は相続財産ではないために、債務控除の対象にならなりません。
節税目的で生前墓を建てる予定なのであれば、現金一括で支払いをした方が無難といえそうです。
生前にお墓を建てることのデメリット
自分が生きているうちにお墓を建てる寿陵には、メリットだけではなくデメリットもいくつかあります。
これから、生前にお墓を購入する予定の人は、これから紹介するデメリットについても頭に入れておくようにするといいでしょう。
生前にお墓を建てることのできる墓地や霊園は限られてしまいます
自分が生きている間にお墓を購入したいと思っていても、どこの墓地や霊園でもそれが可能になるわけではありません。
特に公営の墓地は費用が安いために人気がありますので、申し込みの条件が厳しくなっています。
多くの公営墓地では、「手元に遺骨があること」が条件になっていたりするために、自分が生きているうちに購入するというのは困難になります。
そのため、選択肢としては、費用が高めな民営の墓地や霊園を選ぶことになってしまいます。
残された家族に経済的な負担をかけたくないという思いから生前に墓地を購入しても、結果的に高い買い物になってしまう可能性もあるわけです。
また、生前墓を建てること自体は問題がない墓地であっても、寺院墓地などの場合には檀家になることを求められるケースが少なくありません。
そういったところに生前墓を建てる場合には、家族に相談することはもちろんのこと、自分自身が檀家となることに問題がないかをしっかりと検討する必要があります。
生前に建てたお墓であっても維持管理費が発生します
お墓というのは、購入するときの費用だけではなく、購入したあとにも費用が発生します。
いわゆる年間管理費という形で、数千円~1万円程度を毎年負担しなければなりません。
この維持管理費は、お墓の中に遺骨があってもなくても発生してしまいます。
そのため、あまり早く生前墓地を建ててしまうと、自分が亡くなるまでに支払う費用はそれなりの金額になります。
たとえば、年間の管理費が5000円だった場合、お墓を建ててから自分がなくまるまでの期間が10年間だと5万円、20年間だと10万円の費用がトータルで発生してしまうことになります。
また、その間ずっとお墓の掃除や墓石の手入れなどもしていかなければなりませんので、あまり早い時期に生前墓を建ててしまうのも考えものです。
しかし、人間はいつ死ぬか分かりませんので、生前墓を建てるタイミングというのは、なかなか判断が難しいといえます。
家族から反対される可能性もあります
生前にお墓を建てることは、寿陵と呼ばれてむしろ縁起がいいとされていますが、一般的には縁起が悪いと考える人の方が多いに違いありません。
特に、地方などの古くからのしきたりを大切にするようなところでは、生前にお墓を建てるなんてもっての外だと家族や親族などに反対される可能性が高くなります。
将来的に家族に負担をかけたくないとの思いから生前墓を建てる予定だったのに、その家族に反対されてしまったのでは生前墓を建てる意味がなくなってしまいます。
事前に、しっかりと家族や親戚などと話し合いをして、納得のうえでお墓を建てるようにすべきです。