お墓

手元供養という形で自宅に遺骨を置いて身近に故人を感じる新しい供養スタイル

亡くなった方の遺骨は、骨壺に入れてお墓に納骨するというのが一般的です。

最近では、あえてお墓をつくらずに、永代供養付きの納骨堂などを利用するケースも増えているようですが、いずれにしても、亡くなった方の遺骨というのは、そういった専用の場所に納めて供養をするというのがこれまでの常識でした。

ところが、手元供養という形で遺骨や遺灰を自宅において、故人を身近に感じたいと考えている人が最近は増えているようなのです。

遺骨や遺灰を自宅に置くといっても、普通の大きな骨壺にいれたまま自宅で保管をするというケースはそれほど多くありません。

手元供養をする人の多くは、遺骨の破片や遺灰をペンダントに入れて身につけたり、カラフルなミニ骨壺などに入れて部屋で保管したりします。

ここでは、そんな手元供養について詳しく紹介してみたいと思います。

なぜ手元供養というスタイルを選択する人が増えているのか?

亡くなった方の遺骨を部屋のなかに置いておくのは「縁起が悪い」とか「気味が悪い」といった理由で避けたいと考えるのが普通でしょう。

ところが、手元供養という形であえて身近なところに亡くなった人の遺骨や遺灰を置いておきたいと考える人が、最近になって増えているのです。

その背景には、身近な人を失ったことによる喪失感があるのだと思います。

かつて、日本人が親子三代の大家族で暮らしていた時代には、身近な人が亡くなったことによる喪失感はいまほど強くはなかったに違いありません。

ところが核家族化が進んだ現在では、子どもが独立したあとは夫婦二人きりで生活をするというケースが増えており、どちらかが先立ってしまうと一人だけ取り残されてしまうことになります。

突然一人暮らしになってしまったさみしさから、せめて遺骨だけでも手元に置いておきたいと考える人が増えているのでしょう。

また、先祖代々のお墓を継承するという考え方が薄れてきていることも、手元供養を選択する人が増えている理由の1つになっていると思われます。

最近では、お墓をつくらずに海洋散骨などを選択する人も増えていますが、散骨をしてしまうと、故人を偲ぶための対象が何も残らなくなってしまいます。

そのため、せめて遺骨や遺灰だけでも手元に残しておきたいと考える人が増えてきたのでしょう。

そもそも自宅に遺骨を保管する手元供養は違法にならないのか?

遺骨の取扱いに関しては、墓埋法によってルールが定められており、基本的には墓地以外のところに埋葬することはできません。

そのため、遺骨を自宅で保管するのは違法になるのではないかと心配する人もいるようです。

しかし、墓埋法によって違法となるのは、あくまでも霊園や納骨堂として定められた場所以外に、遺骨や遺灰を「埋める行為」となります。

そのため、埋めずに自宅の室内で保管をする行為は違法にはあたらないという解釈がされています。

もちろん、たとえ自宅の敷地内であっても、地面に遺骨を埋める行為はあきらかにNGということになります。

手元供養には大きく分けて3つのスタイルがあります

手元供養の方法は、大きく3つの方法に分けることができます。

1つは、遺骨をそのまま残したり粉骨化したりして、自宅に置いておく方法です。

こういった形の供養は古くから行われていましたが、「手元供養」などと呼ばれるようになったのは最近のことです。

また、最近の手元供養では、火葬場で渡された大きな骨壺をそのまま保管するのではなく、カラフルなミニ骨壺やオブジェなどに入れて違和感のない形で保管することが多くなっています。

2つめは、遺骨や遺灰をペンダントやブレスレット、ブローチなどに入れて、それを身に着けることによって故人を身近に感じるという方法です。

3つめは、遺骨や遺灰を使って、加工品をつくって手元に置いておくという方法です。

遺骨から養殖真珠をつくったり、ダイヤモンドに加工したりして、手元に置いておきます。

遺骨から作るダイヤモンドは「メモリアル・ダイヤモンド」と呼ばれています。

手元供養のためのさまざまな商品

先に紹介しましたように、現在では手元供養のためにさまざまな商品が販売されていますが、具体的にどういった商品があるのかを見て行くことにしましょう。

定番のペンダントに遺灰を入れて持ち歩くスタイル

手元供養をするときのアイテムとしてよく利用されるのが、ペンダントです。

特にオープンハート型のペンダントが人気になっているようです。

見た目は普通のペンダントですので、そこに遺骨が入っていることにはまず気づかれることはありません。

ペンダントの裏側にあるネジをドライバーで外して、そこから遺骨や遺灰を入れる仕組みになっています。

値段的には、数千円から数十万円のものまで、ピンからキリとなっています。

部屋においてもまったく違和感のないカラフルなミニ骨壺

骨壺といいますと、火葬場で受け取る白い大きなサイズのものを思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、手元供養のためのミニ骨壺は、普通に見ただけでは骨壺だとは気がつかないほどカラフルでおしゃれなものが多くなっています。

故人の遺影のとなりに普通にインテリア的に置いておくことができます。
また、非常に小さな骨壺をポーチとセットにして、持ち歩くことができるようになっているタイプもあります。

このタイプもカラフルなものが多く、骨壺だといわれなければ気がつく人はまずいないでしょう。

部屋のなかだけではなく、大切な人といつでも一緒にいたいと考えている人は、こういったポーチに入れるタイプのミニ骨壺を利用するのだと思います。

遺骨からつくる養殖真珠~「いのりしんじゅ」とは?

亡くなった方の遺骨を使って、養殖真珠をつくるというサービスを提供している会社があります。

養殖真珠というのは、貝から作った「核」をアコヤガイの中に入れて作られます。

ところが、この「核」の部分に貝ではなく遺骨を使って真珠を養殖することはできないかと、この会社は考えたわけです。

そして、試行錯誤の結果、みごと真珠を養殖することに成功し、「いのりしんじゅ」という名前で商品化をすることになりました。

この「いのりしんじゅ」をつくるために必要な遺骨は30g程度で、その遺骨から90個ほどの「核」を作って母貝に入れます。

そのあと、約2年間かけて真珠に育てて行くわけです。

この「いのりしんじゅ」の値段は、25万円となっています。

遺骨から作る手元供養用の人工ダイヤ~「メモリアル・ダイヤ」とは?

遺骨を使って真珠をつくるサービスを紹介しましたが、こちらは遺骨からダイヤモンドをつくるサービスです。

遺骨からダイヤモンドが作れるの?

そんなふうに思う方もいるかも知れませんが、合成のダイヤモンドというのは炭素に高温高圧をかけることで精製することが可能です。

遺骨を炭(炭素)にして、それをダイヤモンドに加工していくわけです。

ただし、遺骨には不純物がたくさん含まれていますから、そこから不純物のない炭素を取り出すには高度な技術が必要になります。

こうして作り上げられたダイヤモンドは、「メモリアル・ダイヤモンド」と命名されています。

1つのダイヤモンドを作り上げるのに必要な遺骨は300g程度で、制作期間の目安は約半年となっています。

料金はサイズによって異なりますが、02カラット~1カラットで28万円~253万円となっています。

決して安くはありませんが、大切な人の遺骨がきれいなダイヤモンドに生まれ変わるということで、年間で200件近い注文があるそうです。

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