2035年には、日本人の約2人に1人が「おひとりさま」になるという予想があります。
つまり、生涯独身であったり家族と死別したりして、1人暮らしを余儀なくされる人が、日本人の半数近くを占めるというのです。
いまから30年ほど前の1980年代後半までは、全世帯数に占める単身世帯の割合は20%未満でした。
その後、単身世帯の数はじわじわと増え続け、2017年には全世帯の27%を占めるまでになりました。
そして、いまから17年後の2035年には、1人暮らしをする「おひとりさま」の数が急激に増えて48%にまでに達してしまうというのです。
いったい、なぜ日本人のおひとりさま化が急激に進んでしまうのでしょうか?
生涯一度も結婚をしないおひとりさまがどんどん増えている
一人暮らしをする世帯がどんどん増えている理由の一つとしてあげられるのが、日本人の未婚化です。
かつての日本人は、ほぼ100%結婚をしていました。
50歳の時点で、過去に一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」といいますが、いまから43年前の1975年には、男性が2.1%、女性が4.3%でした。
つまり、よほどのことがない限りは、みんな結婚をすることができていたのです。
当時はお見合いで結婚をする人が3人に1人ほどいましたし、年頃になって独身でいると、親戚や職場の上司などが結婚相手を紹介してくれたりしました。
ところが、現在ではお見合いで結婚する人はわずか5%ほどにすぎず、かつてのように親戚の人や職場が積極的に後押しをしてくれるということもなくなってきました。
へたに結婚をすすめたりすると、モラハラやセクハラなどと言われかねない風潮になってしまっているため、周りの人も積極的に結婚相手を紹介しにくくなってしまったのでしょう。
その結果、生涯未婚率はどんどん高くなっていき、平成27年の国勢調査によりますと、男性の生涯未婚率は23.6%、女性が14.1%となっています。
参考:平成27年国勢調査
特に男性の生涯未婚率が高く、ほぼ4人に1人が50歳の時点で一度も結婚をしたことがないということになります。
そして、2035年には、男性の生涯未婚率が約30%、女性の生涯未婚率が約20%になると予想されています。
2035年に一人暮らしの世帯が48%にもなる背景には、生涯にわたって結婚しない人の数が増えているということが1つの大きな要因になっているわけです。
離婚によっておひとりさまになる人も増えています
おひとりさまといっても、生涯独身の人ばかりではありません。
過去に結婚はしていたけれども、離婚によっておひとりさまになってしまうという人も少なくありません。
毎年62万組ほどのカップルが結婚していますが、同時に離婚するカップルも毎年22万組ほどいます。
つまり、生涯独身ではないけれども、離婚によって独身になってしまう人が、毎年44万人(22万組)ずつ増えていることになるわけです。
1975年当時の離婚件数は12万組ほどでしたから、離婚するカップルが2倍近くに増えてしまっているわけです。
昔は、離婚をすることは恥ずかしいことだという意識を持つ人が大半でしたが、最近ではあまりそういった世間体を気にせずに離婚に踏み切ってしまい人が増えているのでしょう。
ちなみに、1975年に結婚したカップルは94万組もいました。
つまり、現在とくらべて1.5倍ほど多かったことになります。
結婚する人の数が減り、なおかつ離婚する人の数が増えているのですから、おひとりさまの数がどんどん増えていってしまうのは当然のことといえるでしょう。
配偶者との死別によっておひとりさまになってしまうケース
結婚をしていた人が独身に戻ってしまうのは、離婚だけが原因とは限りません。
配偶者との死別によって、独身となってしまうこともあるわけです。
何か不慮の事故に巻き込まれるといったようなことでもなければ、夫婦が同じタイミングで死ぬということはありませんので、すべての夫婦は最終的にどちらかが独身になります。
つまり、生涯独身の人でなくても、人生の最後には独身になってしまう可能性が誰にでもあるわけです。
日本はこれから少子高齢化がますます加速していきますので、全人口に対する高齢者の占める割合がどんどん増えていきます。
高齢者の割合が増えていくということは、配偶者を亡くした高齢者の割合も増えていくということになります。
日本人の平均寿命は女性の方が高いですから、死別によっておひとりさまになる可能性は、女性の方が高いといえます。
また、結婚をしていて子どもがいたとしても、最近では親と同居するケースは少なくなっていますし、親の面倒はみたくないなどという人もめずらしくなくなっています。
結婚をしていてもしていなくても、最後はおひとりさまになる可能性があるのだという覚悟を、誰もが持つ必要がありそうです。
おひとりさまの老後にはさまざまな問題が発生します
生涯を独身で過ごす人の数がどんどん増えていき、毎年20万組以上のカップルが離婚をし、配偶者を亡くした高齢者の人数が増えていくわけですから、2035年に日本人の2人に1人がおひとりさまになるという予想も、決して大げさではないと思います。
こうして「おひとりさま社会」と化してしまう日本の将来ですが、実際におひとりさまとして生きて行くうえで、どのよう不都合が生じることになるのでしょうか?
基本的に日本という国は、おひとりさまが暮らしにくい国となっています。
将来は有料老人ホームにでも入ってのんびりしたいと考えていても、おひとりさまの場合には身元保証人を探すのに苦労をすることになります。
これは介護施設に入居するときや、病気で入院をするときも同様です。
病院や施設にしてみれば、何かあったときに誰も連絡の取れる人がいないのは困りますし、入院費や施設の利用料を支払ってもらえなくなるリスクもありますから、保証人を求めてくるのは仕方のないことです。
また、持ち家がある人はいいですが、賃貸住宅に住んでいるおひとりさまは、老後に借家を探すのに一苦労することになります。
「孤独死」などという言葉をよく耳にすると思いますが、部屋を貸す側からすれば、孤独死をされるといろいろと面倒なことになってしまうので、なるべくおひとりさまには貸したくないわけです。
このように、日本という国でおひとりさまが生きていくためには、さまざまな障害が待ち構えていることになります。
超おひとりさま時代の到来で日本の国はどう変わるか?
これからおひとりさまがどんどん増えていくことによって、日本の国の暮らしは大きく変わると予想されています。
具体的にどういったところが変わっていくのでしょうか?
まず、ファミレスの数がどんどん減っていくと考えられています。
ファミリーレストランというのは、文字通り家族で食事をするためのお店ですから、日本人の約2人に1人がおひとりさまになるといわれる将来においては、確実に店舗数が減ってしまうに違いありません。
また、ファミレスであっても違和感なく1人で食事ができるように、カウンター席を用意したりするお店も増えていくと思います。
スーパーなどで売られている商品も、現在とは大きく変わっていくことでしょう。
野菜などもまるごと1つのものよりも、おひとりさま向けにカットされたものが多く陳列されるようになるに違いありません。
また、1人暮らしの人が手間暇かけることなく食事ができるように、あらかじめ加工された惣菜などが陳列棚に多くならぶことでしょう。
お墓なども、現在のような立派な墓石を構えるタイプのものはどんどん減っていき、散骨や永代供養などで済ませるケースが増えていくと思います。
誰もお墓参りにきてくれないことが予想されるおひとりさまにとって、立派なお墓は必要ないからです。
お葬式も、火葬と読経だけをしてくれる簡単なプランを生前予約するケースが増えるでしょう。
特に、子どもや親戚などの身寄りがまったくないようなおひとりさまの場合には、本格的なお葬式をしても参列をしてくれる人がいない可能性がありますので無意味です。
自分の死後は、火葬と読経をだけをしてもらって、あとは永代供養墓に納骨してもらえば十分だと考える人が増えてくるに違いありません。