介護施設に入所する際には、身元保証人を求められることが多くなっています。
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの調査によると、介護施設の91.3%が入所時に身元保証人が必要と回答しているようです。
家族や親族に身元保証人を引き受けてくれる人がいる方であれば、特にそのことが問題になることはないでしょう。
しかし、身近に誰も頼る人がいないような「おひとりさま」の場合、自分が介護施設に入所しなければならなくなったときのことを考えると、不安になるに違いありません。
ここでは、身近に頼れる人のいない「おひとりさま」が、介護施設に入所しなければならなくなったとき、身元保証人の問題をどう解決したらいいかについて、考えてみたいと思います。
介護施設が入所のときに身元保証人を求める理由
介護施設が入所の際に身元保証人を求めてくるのには、明確な理由があります。
それは、入所中に何かあったときに、連絡の取れる人が誰もいないというのは困るからです。
何らかの理由で入所費用を払えなくなってしまったり、入所中に容体が悪くなってしまって医療行為が必要になったりする可能性は十分にあります。
そういったときに身元保証人がいれば、代わりに未払いの入所費用を支払ってもらったり、医療行為に対する同意を得たりするということが可能になります。
ところが、身元保証人のいない方がそういった状況になった場合、介護施設側が発生した損失分をすべてかぶらなければならなくなってしまいますし、医療行為に対する同意を施設がすることにもリスクがあります。
また、介護施設が入所時に身元保証人を必要とするもつ1つの理由として、万が一入所中に亡くなってしまったときに困るということもあります。
身元保証人がいない入居者が亡くなってしまった場合、遺体や遺品引き取りなどのさまざまな問題が発生してしまうからです。
おひとりさまじゃなくても身元保証人探しに苦労するケース
身寄りのない「おひとりさま」が、介護施設に入所する際の身元保証人探しに苦労をするのは仕方のないことです。
しかし、配偶者などの家族がいて身元保証人になることを同意している場合でも、施設によっては入所を断られてしまうケースもあります。
たとえば、介護施設によっては、身元保証人となる人の条件を「血縁関係のある65歳以下の人」といった厳しいものにしているところもあります。
こういった介護施設だと、たとえ配偶者がいる方であっても、年齢が65歳を超えていると身元保証人になることができないということになってしまいます。
兄弟や子どもがいる方であれば、そういった人に依頼をすることが可能かも知れませんが、最近は親子や兄弟であっても、身元保証人になることを嫌がるケースも増えています。
親や兄弟の面倒は一切見たくないという割り切った考えの人が、近年では想像以上に多くなっているのです。
身元保証人がいない人はどうやって介護施設に入所したらいいか?
身寄りのないおひとりさまや、血縁関係者がいても身元保証人になってくれる人がいない人の場合、どうやって介護施設に入居したらいいのでしょうか?
もちろん、身元保証人を必要としない介護施設もないわけではありませんが、そういった施設を探すことは容易ではないでしょう。
例外的に身元保証人がいなくても入所を認めてもらえるケース
入居の際に、身元保証人をつけることを求める介護施設であっても、状況によっては身元保証人なしで入居をみとめてくれることもあるようです。
実際に、身寄りがないと一点張りに主張を通し続けた結果、介護施設の方が折れて入所を認めてくれたというケースもあるようです。
また、最初は入所を拒んでいたにもかかわらず、貯金通帳などをみせて、それなりの資産があることを示したところ、身元保証人なしでOKになったという話も実際にあります。
このように、身元保証人をつけることが条件になっている介護施設であっても、状況しだいでは入所を認めてくれることもありますので、最初からあきらめずに交渉をしてみるといいかも知れません。
日頃から付き合いのある友人や知人にお願いをしてみる
身寄りがいないおひとりさまや、家族や親族との仲があまり良くない人の場合、身元保証人を依頼できる人は限られてしまいます。
職場の同僚だった人、学生時代の同級生、近所で親しくさせてもらっている人、サークルで知り合った人といった、日頃から親しくお付き合いをしている友人や知人が唯一の身元保証人を依頼できる人ということになります。
しかし、日頃からどんなに親しくしている人であっても、そう簡単には身元保証人を引き受けてくれるということはないでしょう。
なぜなら、身元保証人になるということは、想像以上にリスクが高いからです。
先ほども書きましたように、万が一のときには介護施設への費用の支払いや、遺体の引き取りなどの責任が生じてしまうからです。
依頼をする方にしても、日頃から親しくして頂いている方に迷惑をかけてしまう可能性があることを考えた場合、気軽には頼みにくいはずです。
仮に快く引き受けてくれる人がいたとしても、その善意に対してすべてを甘えるのではなく、10万円~20万円程度の謝礼を支払うなど誠意は見せるようにした方がいいかも知れません。
ただし、介護施設によっては、身元保証人は「65歳以下の血縁者に限る」という条件のところもありますので、そういったところの場合には、血縁関係のない友人や知人に身元保証人を依頼するという選択肢はなくなります。
身元保証人が必要ない介護施設を根気よく探す
入所の際に保証人を求める介護施設が91%もあるということを先ほど書かせていただきましたが、逆にいうと1割ほどの介護施設は身元保証人がいなくても入居をさせてもらえることになります。
そういった介護施設をインターネットなどで根気よく探すというのも1つの選択肢です。
しかし、自分が入所したい地域でそういった介護施設が見つかるかという点や、身元保証人をつけない代わりに必要となる入所の条件などをクリアできるかどうかという点などが問題になるでしょう。
身元保証人代行サービスを提供している社会福祉協議会もあります
介護施設への入居の際に、どうしても身元保証人を見つけることができない人のために、社会福祉協議会が身元保証人代行をしている地域もあるようです。
たとえば、東京都足立区の社会福祉協議会が提供している身元保証サービスの場合、52万円の預託金(3ヵ月分の入所費用含)と年会費2千4百円で利用をすることができます。
ただし、こうしたサービスを提供している社会福祉協議会はまだまだ限られていますので、誰もがお願いをすることができるというわけではありません。
民間の保証人代行サービスを利用する
どうしても介護施設に入所する際の身元保証人を見つけることができなければ、民間の団体が提供する保証人代行サービスの利用を検討してみるといいでしょう。
全国対応している保証人代行サービスも少なくありませんので、社会福祉協議会のサービスのように一部の人だけしか利用できないということはありません。
多くの団体では、身元保証人になってくれるだけではなく、さまざまな手続きの代行や付添い、さらには自分が亡くなったあとの葬儀やお墓までをトータルで提供していたりします。
もちろん、団体によって発生する費用やサービス内容がことなりますので、予算に合わせて自分自身がしっかりと納得のできるサービスを提供しているところと契約をするようにした方がいいでしょう。
参考記事:介護施設へ入居する際の保証人代行サービス