身寄りのない、いわゆる「おひとりさま」が入院をしたり介護施設に入居したりするときの、身元保証人の問題がクローズアップされています。
身元保証人となってくれる人が誰もいない人は、病気になっても入院ができなかったり施設への入居を断られてしまったりすることが少なくないからです。
また、それだけではなく、高齢の「おひとりさま」になるとアパートやマンションを借りたりすることすらできなくなってしまう可能性もあります。
しかし、病気になって入院をしなければならなくなる可能性は誰にでもありますし、将来的に介護施設や有料老人ホームに入居したりする必要がでてくるかも知れません。
また、マイホームを持っていない人は、なんとか自分が住むところを確保する必要があります。
身寄りのない「おひとりさま」が身元保証人や連帯保証人を探すには、どうすればいいのでしょうか?
入院のときの書類に記入させられる連帯保証人の欄
病院に入院するときには、申し込み書類への記入を求められますが、そのときに困るのが連帯保証人の欄です。
ほとんどの病院が、入院の際には連帯保証人をつけることをもとめているからです。
病院によっては保証人の欄が2ヵ所あるところもあります。
その場合は、保証人になってくれる人を2人探さなければならないということになるのです。
白内障の手術でたった1日だけの入院にもかかわらず、保証人を2人つけることを求められた事例も実際にあります。
そもそもなぜ入院するときに保証人が必要なのでしょうか?
「連帯保証人」というと、お金を借りるときの金銭消費貸借契約書を思い浮かべる人が多いことでしょう。
借金をした人が返済できなくなると困るので、お金を貸す側はリスクを減らすために連帯保証人を要求するわけです。
それに対して、病院はお金を貸すわけではないのになぜ入院するときに連帯保証人を求めるのでしょうか?
理由は単純明快で、入院費をとりっぱぐれると困るからです。
病院というのは、病気になった人の治療をすることを義務付けられている施設ですが、慈善事業ではありません。
患者が支払ってくれる医療費によって経営を成り立たせています。
もし支払能力のない人を無条件で入院させていたら、たちまち経営危機に陥ってしまうことでしょう。
そこで、入院した本人が何らかの事情で入院費を支払うことができなくなってしまったときのために、代わりに支払いをしてくれる人を要求するわけです。
それが、連帯保証人ということになります。
入院の際の連帯保証人には家族などの血縁関係者がなることが多いですが、その人が年金暮らしなどで支払い能力に乏しい場合には、もう一人支払い能力のある人を保証人としてつけさせられることもあります。
なかには、はっきりと「家族以外で生計を別にする人を連帯保証人にしてください」などと言われることもあるようです。
身寄りのない「おひとりさま」にとっては、非常にやっかいな入院時の連帯保証人の問題ですが、病院側にもそれなりの理由があって保証人を要求をしているわけです。
緊急時の連絡先としての意味合いもあります
入院の際に連帯保証人をつけることを要求される理由は、支払に関することだけではありません。
入院中に患者に何かあったときに、連絡を取れる人が誰もいないというのは病院としても非常に困ることになります。
入院というのは病気を治療するためにするものですが、入院した患者のすべてが完治するわけではありません。
入院中に患者の容体が悪化して意識がなくなってしまったり、死亡をしてしまったりすることもあり得ます。
連帯保証人には、そういったときの連絡先としての役割もあるのです。
また、本人の意識がはっきりしなくなってしまったときに、今後の医療方針について相談できる人が誰もいないというのは、病院としても困るでしょう。
病院にしてみれば、もしものときに確実に連絡の取れる人を、保証人として求めるのは当然のことです。
その場合は、連帯保証人というよりも身元保証人といった方が分かりやすいかも知れません。
本来であれば、緊急時の対応は親族などの身内が行うべきものですが、天涯孤独で身寄りのない人の場合は、身元保証人が対応をすることになります。
そういった意味では、入院時の連帯保証人や身元保証人の役割はとても重要であるということがいえます。
賃貸住宅を借りるときにも身元保証人が必要
「おひとりさま」であっても、マイホームに住んでいる人であれば問題ありませんが、そうでない人の場合は部屋を借りるときに身元保証人の問題が発生します。
アパートやマンションを借りるときの「賃貸契約書」には、連帯保証人の欄があるのが一般的です。
そのため、連帯保証人になってくれる人が誰もいない場合には、部屋を貸してもらえなくなる可能性があります。
大家や管理会社が連帯保証人を要求する理由
部屋を借りるときに、大家や管理会社が連帯保証人を要求する理由は、入院の場合と同様に家賃を払ってくれなかったときに困るからです。
たとえ支払能力のある人であっても、将来的なことは分かりません。
病気になって長期入院をしてしまったり、リストラで失業をしたりして家賃が払えなくなってしまうか可能性は誰にでもあります。
そういったときに、連帯保証人がいれば大家や管理会社は本人に代わって家賃の支払いを求めることができるわけです。
部屋を貸す側にしてみれば、家賃が回収できなくなってしまうと賃貸住宅の経営が成り立たなくなってしまいますので、そういったリスクを回避するためにも連帯保証人をつけることは当然のことといえます。
入居者に何かあったときの連絡先としての役割
部屋を借りている人が家賃を滞納してしまったときに、連帯保証人が代わりに支払いをしなければならないのは当然のことですが、それ以外にも役割をもとめられます。
入居者が何か問題を起こしたり、部屋で亡くなってしまったりしたときに、連絡を受けるという役割です。
大家や管理会社にしてみれば、身寄りのない人が問題を起こしたり部屋で亡くなってしまったりしたときに、どこにも連絡をとることができないというのは非常に困ることになるわけです。
また、孤独死をして長期間発見されなかった部屋の場合は、事故物件扱いとなってしまい、新たな借り手を見つけることは困難になってしまいます。
そういったときには、連帯保証人に対して大家が損失分の補償を求めることになります。
特に高齢で身寄りのない「おひとりさま」の場合は、孤独死をしてしまう可能性が高くなりますので、連帯保証人なしで部屋を貸してくれることはまずないと考えていいでしょう。
身寄りのない「おひとりさま」は連帯保証人の問題をどうクリアすべきか
このように、入院をしたり賃貸住宅を借りたりする際には、連帯保証人を求められることになりますが、実際には連帯保証人を探すというのは思った以上に大変です。
たとえ親族であっても、日頃からあまり仲がよくなかったりすると、連帯保証人をお願いしても断られてしまうことも少なくありません。
先ほど説明しましたように、連帯保証人や身元保証人の責任というのは非常に重いからです。
自分の親が入院をしたり施設に入ったりする際に、連帯保証人になることを拒否する実の子どもも実際にいるのです。
実子でさえも拒否する人がいるわけですから、ましてや身寄りのない「おひとりさま」の場合、連帯保証人になってくれる人を探すというのは非常に困難です。
それでは、そういった身寄りのない「おひとりさま」が入院したり賃貸住宅を借りたりするときは、どうすればいいのでしょうか?
身寄りのないおひとりさまが入院しなければならなくなったとき
身寄りのない「おひとりさま」が入院をしなければならなくなった場合、連帯保証人の問題をクリアする方法はいくつかあります。
もし、友人や知人で引き受けてくれる人がいれば問題ありませんが、天涯孤独で身寄りがなく、そういった友人や知人もいないという人の場合は、それ以外の方法を選択するしかありません。
身元保証会社と契約して連帯保証人になってもらう
最近では、身寄りのない人の代わりに保証人になってくれる身元保証会社が増えてきています。
そういったところと契約をすることによって、入院をするときの連帯保証人の欄に、その会社が記入をしてくれることになります。
そういった保証人代行会社による連帯保証人の欄への署名であっても、多くの病院は問題なく入院させてくれます。
また、保証人代行をしてくれる会社のなかには、連帯保証人になってくれるだけではなく、入院手続きの代行や手術の立会人を代行してくれるようなところもあります。
入院をするときにはいろいろとやることがありますし、精神的にも1人だけでは不安になるのです。
身近に頼る人がいないおひとりさまにとっては、トータルでサポートしてくれる保証人代行サービスは心強い存在になってくれるに違いありません。
ただし、こうしたサービスを提供している会社や団体のなかには、実態がはっきりしないようなところもありますので、事前にしっかりとしたところかどうかを確認する必要があります。
また、全国対応をうったっていても、実際には大きな都市近郊しか対応していない会社や団体も多いですので注意が必要です。
当サイトでも一般社団法人終活協議会の「心託」という全国対応の身元保証代行サービスを提供していますので、入院の際の保証人でお困りの方は、以下のページをご覧になってみてください。
「心託」では入院だけではなく、介護施設や老人ホームへの入居の際にも一生涯にわたって身元保証が可能ですし、入院手続きの代行や手術の立会い代行などにも対応しています。
心託の身元保証人代行サービス
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医療ソーシャルワーカーにどうすればいいか相談をしてみる
入院に際して、どうしても連帯保証人をお願いできる人がいなくて、保証会社と契約するのも金銭的に厳しいという人は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談してみることをおすすめします。
何か良い方法をアドバイスしてくれるかもしれませんし、場合によっては保証人なしでの入院を取りはからってくれるかも知れません。
医療ソーシャルワーカーによる事情説明によって、病院がOKをだしてくれれば、申込書の連帯保証人の欄を空欄にしたままで入院することも可能になります。
そういったケースの場合は、入院費を前払いで支払うことを求められることが多いようです。
入院費を前払いでもらうことができれば、病院としても医療費の未回収リスクを大きく減らすことができるからです。
ただし、入院が長期間に及ぶ可能性のあるときや、完治する可能性が低い病気で入院をするときには、さすがに保証人なしだと難しいかも知れません。
クレジットカード払いを選択することで保証人を求めない病院
入院時に保証人になってくれる人が誰もいないという問題は、病院にとっても頭の痛い問題です。
人の命を救わなければならないという使命と、病院の経営を成立させなければならないということで板挟みになっているからです。
そこで、一部の病院では、クレジットカードの番号を登録することで連帯保証人を求めないという試みもされているようです。
クレジットカードであれば、患者本人ではなく直接カード会社に入院費を請求することができますので、病院としても医療費の未回収リスクを回避することができるわけです。
病院側はクレジットカードの利用手数料を負担する必要がありますが、それでも未回収を回避できるメリットの方が大きいに違いありません。
また、患者の側にしてみても、保証人を探す手間が省けるだけではなく、入院によってクレジットカードのポイントが貯まるというメリットがあります。
ただし、こういった方法を選択するためには、患者自身が事前にクレジットカードを所有している必要があります。
クレジットカードの審査には時間がかかりますので、入院の直前にカードを作ろうと思っても間に合わなくなってしまいます。
また、クレジットカードには限度額がありますので、限度額をオーバーするような高額治療を受けるようなときには適用が難しいかも知れません。
まだまだ一般的ではありませんが、今後はこうしたクレジットカードを活用することで、入院時に連帯保証人を求めない病院が増えて行く可能性はあります。
「おひとりさま」が賃貸住宅の契約をするにはどうすべきか
身近に誰も保証人を引き受けてくれる人がいない「おひとりさま」であっても、住む家がないことには生活をすることができません。
そういった方が賃貸住宅の契約をする場合には、どうしたらいいのでしょうか?
保証会社を利用することで保証人なしで賃貸物件を借りる
最近では、連帯保証人がいなくても、保証会社を利用することで賃貸物件を借りられるところも多くなっています。
この場合、入院のときに連帯保証人をお願いする保証人代行会社のように、高額な契約金などは必要ありません。
多くの場合、家賃の0.5ヵ月~1ヵ月程度の費用を入居時に保証会社に支払うことによって、連帯保証人なしでも入居が可能になります。
ただし、賃貸の保証会社の場合、費用的にはそれほどかからない反面、審査に通過しないと利用はできないことになります。
過去に金融トラブルなどを起こして、個人信用機関にデータが残ってしまっている場合(いわゆるブラックリスト)には、審査に通らない可能性が高くなります。
また、勤務している会社や収入によっても、保証会社の審査に通らないことがあります。
基本的には、毎月の収入が家賃の3倍以上ないと審査に通らない可能性が高いといわれています。
高齢の「おひとりさま」も、保証会社の審査には通りにくくなります。
理由は先ほども書きましたように、孤独死をされてしまうと困るからです。
このように、保証会社の審査に通れば、わずか家賃の0.5ヵ月分~1ヵ月分の費用を負担することで連帯保証人を探す手間がなくなるわけですが、誰もが審査に通るわけではないので注意が必要です。
また、保証会社を利用していれば、滞納した家賃がチャラになるということではなく、立て替えしてもらった家賃は、あとで保証会社に返済しなくてはなりません。
保証人不要の物件を根気強く探す
過去に借金を滞納したり自己破産をしたりといった金融トラブルがなく、毎月の収入が家賃の3倍以上あるひとであれば保証会社を利用することができますが、そうでない人の場合はどうすればいいのでしょうか?
賃貸物件のなかには、保証人が必要ない物件もありますので、もし連帯保証人を探すのが困難な「おひとりさま」は、そういった物件を探してみるといいでしょう。
ただし、物件選びのときに気をつけなければいけないのは、「保証人不要」と書かれていても、保証会社を利用することを前提としている物件も多いという点です。
連帯保証人が不要でなおかつ保証会社との契約も必要ない物件というのは、それほど多くはありませんので、根気強く探す必要があります。
「定期借家」と呼ばれる、契約が満了した時点で大家側が契約を更新するかどうかを決めることのできるタイプの物件だと、連帯保証人不要でなおかつ保証人会社との契約も不要で借りることができたりするようです。
しかし、契約期間満了と同時に、貸す側の一存で退去させられる可能性がありますので、その場合にはまた部屋探しをしなければならなくなります。
また、最近話題になっているUR賃貸住宅(都市再生機構という独立行政法人が管理している公的な住宅)も保証人は必要ありませんが、その代わりに本人に対する審査が厳しい傾向にあります。
たとえば、月収が家賃の4倍以上必要であるとか、貯蓄が借りたい物件の月家賃の100倍以上なければいけないといった条件をクリアする必要があります。
つまり、家賃が月5万円だったら、貯蓄が500万円以上なければいけないことになります。
身寄りのない「おひとりさま」であっても、しっかりと貯蓄をしているような人は、UR賃貸住宅の利用を考えてみるといいでしょう。