最近は、生涯独身で過ごす人や一人暮らしの人が増えていることもあり、「おひとりさま」という言葉をよく耳にするようになりました。
Googleで「おひとりさま」というキーワードを検索すると、1140万件もヒットします。
つまり、ネット上には「おひとりさま」というキーワードを含んだホームページがあふれているということです。
しかし、「おひとりさま」という言葉は、かなり曖昧に使われているというのが実情です。
天涯孤独で身寄りのない人を「おひとりさま」と呼ぶこともありますし、生涯独身の人を「おひとりさま」と呼ぶこともあります。
あるいは、生涯独身はなくても、配偶者が亡くなってしまって一人暮らしをしている人のことも「おひとりさま」と呼ぶことがあります。
ここでは、「おひとりさま」という言葉の定義について考えてみたいと思います。
飲食店に1人で行くと「おひとりさま」といわれます
たまたま1人で飲食店に入っていくと、店員さんから「おひとりさまですか?」と聞かれることがあります。
もちろん、その店員さんは「独身の方ですか?」と尋ねているわけではなく「一人暮らしですか?」と確認をしているわけでもありません。
飲食店の人のいう「おひとりさま」というのは、「お一人でお店にやってきたお客様」のことを省略して言っているのだと思います。
ほとんどの人はそのことを理解しているので、「いや、わたしには家族がいます!」などと怒り出す人はまずいません。
そもそも、最近になって流行のように使われている「おひとりさま」という言葉よりも、飲食店で使われている「おひとりさま」の方がはるかに歴史のある言葉ですので、違和感をおぼえることはないわけです。
weblio辞書にも「飲食店などに一人で訪れる客を指す表現。主に店側が用いる言い方。」と書かれています。
おひとりさまという言葉は女性だけに使う言葉なのか?
独身の人のことを「おひとりさま」ということも多いですが、対象になるのは女性だけなのか男女両方なのかという部分もけっこう曖昧だったりします。
weblio辞書で「お一人様」を引くと、先ほどの飲食店に一人で訪れる客という意味のほかに、次のような記述があります。
「婚期を逃した女性を指す言い方。いわゆる「行かず後家」のことであるが、独身を謳歌しているというニュアンスを込めて用いられることもある。」
weblio辞書では、「婚期を逃した女性を指す言い方」と言い切っています。
しかし、実際に私たちが独身の人を「おひとりさま」というときには、男女を区別しないで使っていることが多いはずです。
プレジデントオンラインというサイトには「男おひとりさまの晩年」などというカテゴリーがあります。
日経マネーの電子版にも次のような記事がアップされています。
確かに、おひとりさま向けの終活セミナーなどを開催すると、女性の参加者の方が多い傾向にありますし、「おひとりさま」という言葉から独身女性を連想する人は少なくないのかも知れません。
しかし、生涯未婚率で見ると、女性よりも男性の方が圧倒的に高いという現実があるわけです。
独身の人を「おひとりさま」と表現するのであれば、むしろ男性の方がターゲットとしては多いということになります。
既婚であるか未婚であるかは関係ないという説もあります
1999年に
「おひとりさま向上委員会」
という団体を設立した
故・岩下久美子さんの著書によりますと、
「おひとりさま」の定義は
次のようになるそうです。
2.一人でも楽しめるし、かつ他人とも関わることができる。
3.結婚しているか、未婚か、恋人がいるか、いないか、
とは関係がない。
自分で自分の時間を一人で使える。
これを見ると、私たちが日常的に使っている「おひとりさま」という言葉のイメージとは程遠い感じがします。
結婚をしていて家族がいたとしても、自分自身が自立しており、なおかつ自分一人の時間を大切にして楽しむことができる人が「おひとりさま」なのだそうです。
「おひとりさま」という言葉の解釈は、本当に幅広いと感じさせられます。
本来はグループで利用するのがあたり前の施設を一人で楽しむ人
遊園地などの複数の人で利用することの多い施設を、1人で訪問して楽しむ人が最近は増えているようです。
富士急ハイランドでは、一人で遊園地を楽しみたい人向けに「シングルスマートフリーパス」というチケットを発行しています。
通常のフリーパスだと大人1人5700円のところ、「シングルスマートフリーパス」だと5300円で購入することができます。
また、USJでも、1人だけでアトラクションに搭乗する人を「シングルライダー」と呼んで、優先的に案内してくれたりするようです。
実は、そういった1人で遊園地などを楽しむ人のことも、最近では「おひとりさま」と呼んだりするようです。
イメージ的には、飲食店の店員さんが使う「おひとりさま」に近い感じでしょうか。
これまで大勢の人で楽しむことが常識とされていたものを一人で楽しむということでいえば、「一人カラオケ」や「一人焼肉」なども同じ範疇に入るのかも知れません。
こういったケースの場合は、既婚であるか未婚であるかは関係ありませんので、このような使われ方が浸透してくると「おひとりさま=未婚」という概念はどんどん薄れて行ってしまうのかも知れません。
離別や死別した人を含めて「おひとりさま」と呼ぶのが一般的
「おひとりさま」と一言でいっても、いろいろな使われ方があることがお分かりになったと思います。
そんな中でも、やはり私たちが普通にイメージすることができる「おひとりさま」というのは、ある程度の年齢の人で一人暮らしをしている人ではないかと思います。
「ある程度の年齢」というところがポイントで、たとえ1人暮らしをしていても20代の人のことを、「おひとりさま」と呼ぶのは違和感があります。
子どもが独立をしたあとに、配偶者と死別や離別をして1人暮らしになってしまった人や、結婚適齢期をすぎて1人暮らしをしている人などが、多くの人が抱いている「おひとりさま」のイメージに近いでしょう。
当サイトでも、終活とからめて「おひとりさま」をテーマに取り上げることが多いですが、基本的には「ある程度の年齢の人で一人暮らしをしている人」をイメージして記事を作成しています。
たとえば、過去に以下のような記事をアップしたことがあります。
参考記事:2035年に日本人の2人に1人が「おひとりさま」になる?~天涯孤独の人が増える背景
タイトルだけを見ると、2035年に日本人の2人に1人が生涯未婚になってしまうように感じるかも知れませんが、そうではありません。
あくまでも、離別した人や死別した人も含めて2035年には2人に1人が1人暮らしになる可能性があるということです。
死別や離別をした場合であっても、配偶者がいないということであれば「独身」にはかわりありませんから、多くの人がイメージしている「おひとりさま=独身」というのは、あながち間違いではなさそうです。