高齢者向けのシェアハウスが注目をあびているようです。
シェアハウスというのは、複数の人が共同で生活をするスタイルの賃貸住宅で、各々の個室とは別に共同スペースがあり、風呂や台所なども共同で使うのが一般的です。
シェアハウスというと、若い独身の人たちが家賃節約のためや一人暮らしのさみしさを解消するために利用したりするというイメージがあると思います。
ところが、最近では高齢者でありながら、シェアハウスに住むことを希望する人も増えています。
その背景には、「おひとりさま」の高齢者が年々増えており、一般の賃貸住宅に入居できない人が多くなっているという現実があるようです。
高齢のおひとりさまにとっては安否の確認はとても重要
高齢で一人暮らしをするおひとりさまにとって、安否の確認というのはとても重要な問題になります。
1人暮らしの方がなんらかの病気になって倒れたりした場合、孤独死に直結するからです。
実際に、多くのおひとりさまが孤独死によって亡くなっているという現実があります。
参考記事:おひとりさまが孤独死をしないために事前にしておくべき終活とは?
身寄りがまったくなく、近所の人との付き合いなどもないような人の場合は、どうしても孤独死につながる可能性が高くなります。
ところが、シェアハウスに何人かの人と共同で生活をするようにすれば、何かあったときに、共有スペースに顔をみせなくなることで誰かに気がついてもらえる可能性が高くなります。
また、病気などで体調を崩した場合も、同居している人たちに「具合が悪そうだ」と気づいてもらうことができます。
高齢者向けシェアハウスの最大のメリットは、つねにお互いの安否の確認ができるという点にあるといえます。
高齢の「おひとりさま」は一般の賃貸住宅を借りられないという現実
高齢のおひとりさまは、一般の賃貸住宅に入居するのが困難であるという現実があります。
なぜなら、先ほども書きましたように、おひとりさまの場合は孤独死をされる可能性が高いので、どうしても部屋を貸す方は慎重になってしまいます。
孤独死をされてしまうと、その部屋は事故物件扱いとなってしまい、次の入居者探しに苦労することになります。
大家さんが高齢者の入居を敬遠したくなるのも、ある意味では仕方のないことといえます。
一般に60歳を過ぎると入居審査に通りにくくなり、70歳を過ぎると審査に通るのは非常に困難になるといわれています。
参考記事:高齢者は賃貸物件を借りにくいという事実~賃貸派の人が知っておくべきリスク
また、賃貸住宅に入居の際には連帯保証人が必要になりますが、身寄りのないおひとりさまの場合は、連帯保証人を依頼できるような人も周りにはいません。
連帯保証人が見つからない人の場合は、保証会社を利用するのが一般的ですが、高齢者でおひとりさまという条件だと、引き受けてくれる保証会社を探すのは困難になります。
ところが、高齢者向けシェアハウスの場合は、基本的には高齢のおひとりさま向けのサービスとなりますので、入居拒否となる可能性は低くなります。
また、高齢者向けシェアハウスの場合、連帯保証人も不要のところが多いです。
同居人どうしが、お互いの安否を確認できるために、孤独死をする可能性が低いからです。
シェアハウスであれば生活費をおさえることも可能になります
シェアハウスの場合、風呂や台所などを共同で使うことになるため、一般の賃貸住宅にくらべて家賃が低めに設定されているのが普通です。
同じ条件のワンルームなどにくらべると、7割~8割程度の家賃で済むことが多いようです。
また、礼金や敷金なども発生しないところも多く、入居の際に保証金として3万円程度を納めるだけで入居が可能だったりします。
さらに、台所を共同で使用するため、食材なども共同で購入するようにすれば、1人暮らしのときにくらべて食費をおさえることもできます。
お風呂や冷蔵庫などを共同で使うことになりますので、水道光熱費なども、ワンルームで一人暮らしをするときにくらべて安くなります。
高齢者のおひとりさまの中には生活保護を受けているような人も多いと思いますので、生活費を切り詰めることができるシェアハウスのメリットは大きいといえるでしょう。
プライバシーを保ちつつ一人暮らしの不安を解消できる
高齢になっての一人暮らしというのは、誰もが不安を感じるに違いありません。
身近に話をする人が誰もいなかったり、体調がすぐれないときに相談できる人が誰もいなかったりというのは、高齢者にとっては大きな不安材料です。
そういった、高齢者にとっての不安材料を解消できるという点においては、シェアハウスに大きな魅力を感じる人が多いのも頷けます。
ただ、1人暮らしには不安があるといっても、個人のプライベートな空間がまったくないと、人間はストレスを感じてしまいます。
共同生活をしている人たちは、まったくの他人なわけですから、それなりに気を使う必要があります。
四六時中気を使っていたのでは、誰でもストレスをためてしまいます。
ところが、シェアハウスの場合は、台所やお風呂は共同であっても、個室が用意されているのが普通ですから、適度にプライバシーを保つことができます。
一人になりたいときは自分の部屋で過ごせばいいし、誰かと話がしたい場合は共同スペースに顔をだせばいいわけです。
高齢者向けシェアハウスを利用する際のデメリットと注意点
身寄りのない高齢のおひとりさまにとって、メリットがたくさんあるシェアハウスですが、もちろんデメリットもあります。
入居を検討する際には、デメリットも含めてトータル的に判断する必要があります。
介護が必要な人は基本的に入居をすることができません
高齢者向けのシェアハウスに入居するための条件として、自分で身の回りのことがすべてできる必要があります。
有料老人ホームや介護施設のように、スタッフが常駐しているわけではありませんので、身の回りのことが自分でできない人がいると、他の入居者に迷惑をかけてしまうからです。
一般の賃貸住宅にくらべると、入居のハードルはかなり低い高齢者向けのシェアハウスですが、料理や洗濯、掃除など、自分のことはすべて自分でできるということが入居の条件になります。
シェアハウスではある程度の協調性が必要になります
シェアハウスの場合、1人暮らしのさみしさや不安は解消できますが、基本的に赤の他人といっしょに暮らすことになりますので、ある程度の協調性は必要になります。
高齢者の場合、人生経験が長いこともあり、独自の考えや価値観を持っている人が少なくありません。
しかし、自分の考えばかり押し通すような人は、シェアハウスでは浮いた存在になってしまいますので注意が必要です。
また、台所や風呂などの共有スペースは、当番を決めて掃除をしなければなりませんので、そういったルールをしっかりと守ることができなければ、シェアハウスで共同生活をすることはできません。
バリアフリーに対応していない建物もあります
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や高齢者向けに建てられた分譲マンションなどでは、段差をなくしたり手すりをつけたりといった、バリアフリーに対応しているのが普通です。
しかし、高齢者向けシェアハウスの場合、バリアフリーに対応していない建物も少なくありません。
もともと介護などを必要とする人は入居できない決まりになっていますし、建物そのものも、一般向けのものをリフォームして高齢者向けシェアハウスにしたりすることがあるからです。
高齢者向けシェアハウスへの入居を検討している人は、事前にバリアフリー対応になっているかどうかを確認するようにした方がいいでしょう。