おひとりさまの終活

おひとりさまが誰にも迷惑をかけずに亡くなるのは難しい~遠い親戚に迷惑をかける?

親や兄弟もなく、生涯独身で配偶者や子供もいないので、自分が死んでも誰にも迷惑をかけることはないだろう思っている「おひとりさま」もいるかも知れません。

しかし、それは大きな間違いです。

なぜなら、おひとりさまが孤独死すると、たとえ遠い親戚であっても血縁関係があれば、その人のところに連絡がいく可能性があるからです。

たとえば「いとこ」や「はとこ」といった人たちです。

これまでの人生で数回しか会ったこともないような遠い親戚にまで、死後手続きのための連絡が行ってしまうのです。

孤独死をすると6親等までの親戚に連絡がいきます

おひとりさまが孤独死の形で亡くなった場合、警察では6親等以内の親戚の人に片っ端から連絡をしていくことになります。

親や兄弟がいなければ、叔父や叔母、従妹などに連絡をしていきます。

そしてちょうど6親等にあたるのが「はとこ」ということになります。

「はとこ」というのは、祖父母の兄弟の孫にあたります。

別な言い方をすれば、親のいとこの子どもが「はとこ」ということになります。

あなたは自分のおじいさんやおばあさんの兄弟の孫といわれても、その人の顔を思い浮かべることができますか?

そんな、すぐに顔を思い浮かべることのできないような、遠い親戚のところにまで連絡が行ってしまうのです。

民法では6親等までが親族ということになっていますので、自分は天涯孤独だと思っていても、親族が1人もいないということはまずありえないことになります。

遠い親戚が葬儀を行うと費用はすべて自腹になる

「おひとさまであっても、自分の財産を相続した人がその中から葬式代くらい負担してくれるでしょう?」

そんなふうに考える人もいるかも知れません。

しかし、残念ながら「いとこ」や「はとこ」は法定相続人になることはできません。

法定相続人となることができるのは、兄弟姉妹の子ともである甥や姪までとなります。

もし該当者がいない場合には、財産はすべて国庫に納められてしまいます。

参考記事:おひとりさまが残した財産は誰に相続されるのか?~兄弟・甥・姪・国庫納付
         

つまり、孤独死をした人の「いとこ」や「はとこ」にあたる人は、遺産をまったく受け取ることができないにもかかわらず、遺体を引き取って葬儀をしなければならなくなる可能性があるわけです。

本格的な葬儀はしないとしても、火葬をしたり永代供養付きの納骨堂に遺骨を納めたりするには費用がかかります。

さらに、死亡届などの役所への手続きをしなければなりませんし、電気・ガス・水道などのライフラインの解約手続きもあります。

人が亡くなったあとにやらなければならない手続きというのは、想像以上にたくさんあります。

参考:葬儀が終わったあとにやらなければならないさまざまな手続きと必要書類
         

ほとんど顔も知らない遠い親戚のために、自腹でそこまでやらされる当人にしてみれば、迷惑千万な気持ちになるに違いありません。

遺体の引き取りを拒否しても罪悪感は残る結果になります

もちろん、警察から連絡を受けた遠い親戚の人は、遺体の引き取りを拒否することも可能です。

6親等以内の親族であっても、必ずしも死後の手続きを引き受けなければならないという法的な義務はないからです。

その場合は、行政によって火葬されて無縁仏として共同墓地に納骨されることになります。

ただし、そうなった場合でも、警察から連絡がいった遠い親戚の人には、罪悪感を持たせることになってしまうでしょう。

ほとんど顔もしらない遠縁の人とはいえ、親族にあたる人の遺体の引き取りを拒否するわけですから、良心のある人であれば心が痛むに違いありません。

たとえ遠縁の人に金銭面での迷惑や死後の手続きで煩わしい思いをさせることはなかったとしても、後ろめたい気持ちにさせることそのものが迷惑行為となってしまうのです。

借金を残したまま亡くなると甥や姪にまで迷惑がかかります

親や兄弟はいなくても、兄弟の子どもである甥や姪はいるという「おひとりさま」もいることでしょう。

そういった「おひとりさま」が借金を残したまま亡くなった場合、甥や姪が借金を返済しなければならなくなるかも知れません。

先ほども書きましたように、甥や姪も法定相続人となります。

相続というのは、現金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金をしていたり連帯保証人になっていたりというマイナスの財産も対象になるのです。

つまり、プラスの財産を処分しても返済しきれないほどの借金がある場合、相続をした人に返済の義務が発生するのです。

甥や姪が相続放棄の手続きをすれば返済の義務はなくなります。

しかし、相続放棄の手続きは亡くなってから3ヵ月以内にしなければなりませんので、叔父や叔母に多額の借金があることを知らずに、そのまま相続をしてしまう可能性があります。

多額の借金を抱えている「おひとりさま」は、万が一のときには甥や姪に迷惑をかける可能性があるということを頭に入れておくようにした方がいいでしょう。

おひとりさまが死後に誰にも迷惑をかけないための死後事務委任契約

おひとりさまが亡くなったときに、ほとんど会ったこともないような遠い親戚の人に迷惑をかけないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?

自分が死んだあと、遺体の引き取りから納骨まですべてを行ってくれて、死亡届やライフラインの契約解除などさまざまな手続きを代行してくれる人がいれば、基本的には誰にも迷惑をかけることはありません。

実は、「死後事務委任契約」といって、自分が死んだあとのさまざまことを代行してもらうことのできる契約があるのです。

死後事務委任契約は、行政書士や司法書士などに依頼をすることになりますが、自分が死んだあとにしてもらうことに対する契約なので、しっかりと第三者に契約内容が分かるようにしておかなければなりません。

そのため、公正証書の形にして残しておくのが一般的です。

また、行政書士や司法書士以外に終活関連のサービスを提供している団体などでも、身元保証代行業務などとともに、死後事務委任契約の依頼を受けているところが少なくありません。

当サイトでも、以下のようなサービスを紹介しています。

参考:一般社団法人終活協議会による心託サービス
        

死後事務委任契約は高額な費用がかかるのがデメリット

死後事務委任契約をすることで、自分が死んだあとのことをすべてお任せできれば、遠い親戚の人に迷惑をかけるということはありません。

しかし、死後事務委任契約にはデメリットもあります。

それは、思った以上に費用がかかってしまうということです。

葬儀や納骨などをどこまでやるのかによっても費用は大きく変わってきますが、簡単な火葬式を行って永代供養の納骨堂に遺骨を納め、遺品整理やさまざまな手続きの代行をすべてお任せすると、100万円前後はかかってしまいます。

もちろん、葬儀の内容やお墓のグレードによって費用は大きく変わってきますので、上限はありません。

遠い親戚に迷惑をかけることなく、最低限の火葬式と手続き関係だけでかまわないと考えるのであれば、50万円程度から依頼を受けてくれるところもあるようです。

いずれにしましても、死んだあとに人に迷惑をかけないための手段として、死後事務委任契約というものがあるということだけでも、おひとりさまは頭に入れておいた方がいいでしょう。

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