おひとりさまの終活

おひとりさまが特定の人に財産を残したいときは養子縁組をするのがベストです

天涯孤独のおひとりさまにとって、自分が亡くなったあとに所有する財産がどうなってしまうのか気になることでしょう。

相続をする人が誰もいなければ、その財産はすべて国庫に入ってしまうからです。

参考記事:おひとりさまが残した財産は誰に相続されるのか?~兄弟・甥・姪・国庫納付
        

自分が国に税金を納めながらやっとの思いで残した財産なのに、死んだあとにすべて国に没収されてしまうというのは納得がいかないという人もいることでしょう。

国に取られてしまうくらいなら、お世話になった人に残してあげたいと考える人もいるかも知れません。

そういったときにおすすめなのが、養子縁組によって相続財産を残すという方法になります。

本当に天涯孤独かどうかを確認してみる必要があります

すでに両親や兄弟が亡くなり、独身で配偶者や子どもがいなければ、自分は天涯孤独で法定相続人は誰もいないと思ってしまうかも知れません。

しかし、それはただの勘違いで、実際には法定相続人が存在するかも知れません。

なぜなら、すでに亡くなってしまった兄弟の子どもである甥や姪がいれば、法定相続人として遺産を引き継ぐことができるからです。

そういったケースの場合は、残した財産が国庫に入ってしまうことはなく、すべて法定相続人である甥や姪が相続をすることになります。

たとえ何十年も顔を見たことのない甥や姪であっても、法的にはそういうことになっているのです。

自分は天涯孤独だと思っていたおひとりさまは、兄弟たちの子どもである甥や姪の存在を
忘れていないかどうか、いまいちど確認をしてみましょう。

養子縁組をすることで財産を確実に残すことができます

両親や兄弟だけではなく、姪や甥もこの世にいないということであれば、法定相続人は存在しないことになります。

そういった方が、お世話になった人に財産を残したいと考えているのであれば、養子縁組をするのが確実です。

また、甥や姪がいるけれども、彼らに財産を渡したくないと考えている場合も、養子縁組をするのがベストです。

なぜなら、養子縁組をすることで、養子は実子とまったく同じように法定相続人になることができるからです。

実子は相続の第一位順位となりますので、配偶者がいない人の場合にはその子どもに100%財産を残すことができます。

養子の場合もまったく同じで、たとえ甥や姪がいたとしても、彼らに遺産がわたってしまうことはありません。

甥や姪というのは、あくまでも相続の第三順位だからです。

そのため、お世話になった人に財産を残してあげたいと考えているのであれば、養子縁組をすればいいことになります。

公正証書遺言書を残すよりも養子縁組する方が簡単で費用もかからない

お世話になった人に財産を残してあげるのであれば、わざわざ養子縁組などしなくても、遺言状を残せばいいのではないかと考える人もいるかも知れません。

確かに、両親がすでに亡くなっており、配偶者もいない人であれば、遺言状でもお世話になった人にすべての財産を残すことが可能です。

両親や配偶者などがいる人の場合ですと、遺言状を書いても遺留分というものがありますので、特定に人に100%の財産を残すことができませんが、甥や姪などは遺留分の対象にはなりませんので、遺言状に記載した人にすべての財産を遺贈することが可能になります。

ただ、おひとりさまの場合は、遺言状を残したとしても、どうやって確認をしてもらうのかという問題が発生します。

公正証書遺言の形で残しておけば、公証役場で遺言状の有無を確認することができますが、法定相続人ではない人が確認をするのは少々面倒です。

法定相続人であれば、遺言書の有無を照会するために必要な書類は戸籍謄本と本人確認書類だけで済みます。

ところが、相続人ではない人が公証役場で遺言書の有無を照会するためには、受遺者であることが想定できる資料を用意したうえで説明をする必要があります。

また、公正証書遺言を作成するためには、証人2人の立会いが必要になりますが、おひとりさまが自分で2人の証人を探すというのは困難でしょう。

その場合は、弁護士や司法書士などに証人になってもらう必要がありますので、費用が発生することになります。

それ以外にも、財産の額に応じて公証役場に手数料を支払わなくてはなりません。

それに対して、養子縁組であれば市町村役場に行って、「養子縁組届」に記入捺印をして提出するだけで済んでしまいます。

たったこれだけで、法律上の親子関係になることができ、相続に関しても実子と同じ扱いを受けることができるのです。

つまり、法定相続人ではないお世話になった人に財産を残したい場合には、公正証書遺言書を残すよりも、養子縁組をする方が手続き的に簡単で費用もかからないのでお得ということになります。

養子になった人は二重に相続財産を受け取ることが可能

養子縁組をするということは、養親との間で新たな親子関係を作ることになりますので、実の親と縁が切れてしまうのではないかと心配する人もいるかも知れません。

しかし、心配にはおよびません。

血縁上の親と法的な親子関係がなくなってしまうのは、あくまでも「特別養子縁組」という方法で養子になった人だけです。

参考:特別養子縁組制度について~厚生労働省
     

一般的な「普通養子縁組」であれば、実の親との関係はそのままで、養親との間でも新たな親子関係をつくることができるのです。

その結果、養子になった人にとっては、実親と養親の2つの親が存在することになります。

そのため、養親が亡くなったときだけではなく、実親が亡くなったときにも法定相続人となることができるのです。

つまり、二重に相続財産を受け取ることが可能になるということです。

養子縁組のデメリットは姓が変わってしまうということ

おひとりさまが、お世話になった特定の人に財産を残す方法としてさまざまなメリットのある養子縁組ですが、デメリットがないわけではありません。

一番のデメリットは、姓が変わってしまうことでしょう。

たとえば、佐藤さんという姓の人が田中さんの養子になると、田中姓を名乗らなければなりません。

また、佐藤さんが戸籍の筆頭者で配偶者がいる場合には、その配偶者も同様に田中姓を名乗る必要があります。

婚姻以外で自分の姓が変わってしまうというのは、抵抗を感じるという人が多いに違いありません。

ですから、お世話になった人に財産を残すために養子縁組をするのであれば、姓が変わってしまうことに問題がないかどうかをまっ先に確認をしなければなりません。

ただし、養子縁組をしても姓を変えなくてもいいケースが1つだけあります。

それは、既婚者が配偶者の苗字を使用している場合です。

たとえば、山田さんという人が結婚をして配偶者の姓である村田さんを名乗ることになった場合、その村田姓のままで養子縁組をすることができるのです。

また、このケースの場合には、戸籍を移動したり新たに戸籍を作成したりする必要はありません。

現在の戸籍の「身分事項」欄に、養子縁組をしたという事実が記録されるのみです。

ですから、おひとりさまがお世話になっている人を養子に迎え入れたいと思っている場合、その方がすでに結婚をしてご主人の姓を名乗っている女性の方であれば、そのままの姓で養子縁組ができることになります。

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