最近は、本格的なお葬式をせずに、火葬をするだけで済ませてしまう遺族が増えてきているようです。
そういったお葬式のやり方を、火葬式あるいは直葬と読んでいます。
こうした火葬式(直葬)の場合、祭壇を設けたり、お坊さんに読経や戒名をつけてもらったりということがないので、葬儀費用を安く済ませることができるというメリットがあります。
しかし、従来の葬儀になれた人にとっては、火葬をするだけというスタイルになんとも物足りなさを感じるに違いありません。
ここでは、なぜ火葬式がふえているのかという社会的な背景や、火葬式の手順や費用的なことに関して詳しく紹介してみたいと思います。
なぜ火葬式だけでお見送りをする遺族が増えているのでしょうか?
これまでの日本では、何か特別な事情でもない限り、火葬式だけで済ませるというケースはめったにありませんでした。
しかし、近年は都市部を中心に火葬式で済ませる遺族の割合がどんどん増えてきており、葬儀全体に対して火葬式の占める割合が20%にもなるといわれています。
つまり、お葬式の5件に1件は火葬式で行われているということです。
いったいどのような理由から、火葬式で済ませるケースが増えているのでしょうか?
故人の遺志にしたがって行われるケース
故人が生前に、自分が亡くなったあとに家族に経済的な負担をかけたくないとの思いから、火葬式を希望することがあります。
自分が亡くなったあとに十分な財産を残してあげることができないと考えた人が、エンディングノートや遺言書などに「葬儀はしなくていい」などと記載したりするわけです。
お葬式にかかる費用の全国平均は189万円ほどだといわれています。
参考記事:お葬式費用の全国平均は189万円~葬儀一式・寺院への費用・飲食接待費
そういった負担を自分の遺族にさせたくないと考えている人が、みずから火葬式で済ませることを望むわけです。
また、最近では遺骨をお墓に納めずに散骨してほしいと希望する人も増えています。
そういった人の場合、葬式も火葬だけで十分だと考えることが多いようです。
遺族の判断によって火葬式にすることを選択するケース
故人の意思ではなく、遺族の判断によって火葬式だけで済ませるというケースもあります。
先ほども書きましたように、本格的な葬儀を行おうとすれば多額の費用が発生します。
故人が入院中にかかった医療費を支払うのが精いっぱいで、お葬式にかける費用までは捻出できないという遺族もいるわけです。
最近は、病院で長期間にわたって闘病生活を送ったあとに亡くなる人が増えています。
そういった社会的背景も、葬儀費用までは捻出できないという遺族の数を年々増やしてしまっているのだと思います。
火葬式(直葬)で済ませるときのメリットとデメリット
都市部では5件に1件が直葬で行われているわけですが、本格的なお葬式をする場合にくらべて、どういったメリットやデメリットがあるのでしょうか?
これから、火葬式で故人をお見送りしようと考えている人は、メリットとデメリットをしっかりと考慮したうえで、あとで悔いが残らないような選択をしてほしいと思います。
火葬式は20万~30万円と安く済ませることができる点がメリット
火葬式(直葬)で故人をお見送りするときの最大のメリットは、なんといっても費用を安く済ませることができるという点だと思います。
本格的な葬儀を行った場合の費用は全国平均で189万円ですが、火葬式の場合には20万円~30万円の費用で済んでしまいます。
火葬式の場合、お坊さんを呼んでの読経はしないのが普通です。
一般に、葬儀のときにお坊さんに渡すお布施の額は20万円~100万円以上だといわれていますので、火葬式だとその分がまったくかからないことになります。
参考記事:お布施の本当の意味と葬儀や法事でお坊さんに渡すときの相場
また、火葬式であれば祭壇なども必要ありませんし、通夜ふるまいや精進落としなどの費用も発生しません。
火葬式のときに発生する費用としては次のようなものがあります。
- 棺の代金
- 遺体を搬送するための車両費
- 遺体を保存するためのドライアイスの代金
- 遺影を作成する費用
- 棺に入れるお別れの花の代金
- 枕飾り一式の費用
- 火葬料
- 火葬場の休憩室利用料
- 骨壺の代金
- 葬儀社の人件費
これらの費用をすべて含めて、20万円~30万円で済んでしまうという点が、火葬式の一番のメリットということになります。
参列者にたいする対応や気遣いなどをしなくても済む
火葬式の場合、参列するのは身内だけになります。
そのため、一般の葬式のように大勢の人への対応や気遣いなどをしたり、香典返しの準備をしたりといったことが必要なくなります。
多くの人が故人を偲んで葬儀に参列してくれることはとてもありがたいことなのですが、遺族にとってはなにかと気苦労もあるものです。
火葬式の場合には、そういったことを心配する必要がないというのも1つのメリットといえるでしょう。
直葬で済ませるときに考えられるデメリット
火葬式で済ませることによって、メリットだけではなく当然ながらデメリットも生じることになります。
まず、故人の友人や知人、あるいは親戚などから「なぜきちんとした葬式をしてあげないのか」といった不満がでる可能性があります。
最近は、火葬式が増えているとはいっても、まだまだ一般的ではありません。
特に地域のつながりが濃い地方などだと、変わり者扱いされる可能性もあります。
故人を火葬式でお見送りする際には、第三者からそういった目で見られる可能性があるということを知っておく必要があります。
火葬式であっても葬儀社におまかせするのが無難です
火葬式のメリットやデメリットを十分に考慮したうえで、それでも直葬で葬儀を行いたいと判断したときに、どのような手続きで進めたらいいのかを考えてみましょう。
直葬の場合、基本的には火葬をして遺骨を拾うだけになるので、祭壇などを用意する必要がありません。
そのため、あえて葬儀社に依頼をせずに行うことも可能です。
しかし、自分で遺体を安置する場所を用意して、棺やドライアイスなどを準備するのは大変です。
また、火葬場の手配や遺体の運搬も自分で行わなくてはなりませんし、火葬場によっては葬儀社を通さないと受付をしてくれないところもあります。
そういった慣れない仕事を自分でするよりは、20万円~30万円の費用で済むのであれば、葬儀社に一切をお任せしてしまった方がいいと思います。
直葬をする場合であっても読経をお願いすることは可能です
基本的には火葬をするだけの直葬ではあっても、せめてお坊さんに読経をしてほしいと考える家族もいるかも知れません。
火葬式であっても、なんとか故人を成仏させてあげたいと思うのが普通だからです。
そういう場合には、葬儀社に相談をしてみることをおすすめします。
直葬であっても、僧侶に読経をしてもらうことを選択できるケースが多いからです。
菩提寺との付き合いがあるときには僧侶に相談しましょう
火葬式であっても、葬儀社に依頼をすることで僧侶に読経をしてもらうことは可能です。
しかし、菩提寺との付き合いのある家族の場合には、まずは菩提寺に相談をした方がいいと思います。
なぜなら、菩提寺によってはお通夜や告別式などの伝統的な儀式のとき以外には読経をしてくれないところもあるからです。
決まった菩提寺がない場合には葬儀社におまかせかで大丈夫
都市部に住んでいる人などで、特に菩提寺がないという人であれば、葬儀社におまかせをして火葬のときにお坊さんを呼んで読経をしてもらうことができます。
葬儀社のお坊さん手配サービスを利用したときの費用の目安としては、3万円~5万円が相場となっています。
また、戒名が必要な場合は別途でその費用も必要になります。
ただし、戒名料といっても本格的な葬式をするときに菩提寺のお坊さんに渡す額にくらべるとだいぶ安くなっています。
一般的な葬儀でお坊さんに渡すお布施(戒名料)の相場が20万円~100万円以上なのに対して、火葬式で葬儀社に依頼した場合は、戒名のランクにもよりますが2万円~15万円が相場となります。
また、そうした火葬式専用のお坊さんを葬儀社から派遣してもらった場合でも、檀家になるように勧められることはありませんので、その点は安心です。