「今年は喪中だから神社に参拝してはいけない」とか「喪中が明けるまでは結婚式などのお祝い事をしてはいけない」といったような話を、何度か耳にしたことがある人もいることでしょう。
しかし、それは本当でしょうか?
こういったことを物知り顔でアドバイスする人の多くは、「喪中」と「忌中」の区別ができていなかったりします。
そもそも、「喪中(もちゅう)」という言葉は知っていても、「忌中(きちゅう)」という言葉は聞いたことがないという人もいるでしょう。
神社に参拝することができなかったり、結婚式などの祝い事は遠慮しなければならなかったりするのは、実は「喪中」でなく「忌中」の期間なのです。
忌中の期間にやってはいけないとされていること
私たちがよく耳にする喪中というのは、一周忌を迎えるまでの期間とするのが一般的です。
それに対して、忌中というのは四十九日までの期間を指します。
仏教では、忌中というのは「忌(いみ)にこもる期間」で、喪中は「喪に服する期間」とされています。
死のけがれが重い期間を忌中といい、けがれが薄くなった期間が喪中ということになります。
それでは、四十九にまでの期間である忌中のときにやってはいけないことについて、具体的にみていくことにしましょう。
忌中の期間は結婚式などの慶事などは遠慮すべきとされています
結婚式などの慶事は遠慮すべきとされているのは、喪中の期間ではなく忌中の期間です。
つまり、四十九日が明けるまでの期間ということになります。
たしかに、四十九日が終わらないうちにお祝い事をしたり、慶事に参加したりするというのは常識的に考えても不謹慎なイメージがあるでしょう。
しかし、四十九日を過ぎて忌中の期間が終わり忌明けとなれば、普通の生活に戻ることができるわけですから、たとえ一周忌前の喪中の期間であっても、お祝い事をすることは問題ないとされています。
たとえば、結婚式を予定していたカップルが、近親者が亡くなったことにより1年間も式を挙げることができないというのは気の毒な話です。
招待状を出してしまったあとに予約した式場をキャンセルするというのも大変な話です。
そのため、四十九日を過ぎて忌中が終わり、心の整理がついたのであれば、喪中の期間であっても結婚式を行っても構わないという考え方が一般的といえます。
忌明けとなれば神社に参拝をしても問題ありません
喪中の期間は、神社に行ってはいけないという話もよく耳にしますが、こちらも喪中ではなく忌中の期間と考えるのが一般的です。
そのため、忌中の期間が終われば神社に参拝しても何の問題もないということになります。
よく、喪中の期間は鳥居をくぐってはいけないなどという人もいるようですが、これも何の根拠もありません。
忌中の期間が終われば、堂々と鳥居をくぐって神社に参拝をして問題ありません。
もし可能であるならば、忌中の期間が終わったタイミングで、神社にお願いをして「忌明け祓い」をしてもらうといいでしょう。
仏教の場合は四十九日が終わるまでを忌中としますが、神社の場合は五十日が過ぎたときを忌明けとしています。
厳密にいいますと、神社での忌明けの期間は、亡くなった方との間柄によって次のように細かく期間が分けられています。
●配偶者・・・50日
●祖父母・・・30日
●兄弟姉妹・・・20日
●子ども・・・20日
●孫・・・10日
●おじ・おば・・・20日
●いとこ・・・1日~3日
これらの忌明けまでの期間は神社によっても異なることがありますので、身内の方が亡くなったあとに参拝に訪れるさいには、事前に神社に確認をしておくといいでしょう。
そして、神主さんに忌明け祓いをしてもらってから参拝をするようにすれば万全です。
いずれにしましても、誰が亡くなった場合であっても50日を過ぎれば神社に参拝しても問題はないということを覚えておけば大丈夫です。
引っ越しや旅行なども忌中の期間は避けるほうが無難です
人が亡くなるのは突然のことも多いので、忌中の期間にたまたま計画をしていた引っ越しや旅行などが重なってしまうことがあるかも知れません。
しかし、四十九日が過ぎるまでは、引っ越しや旅行などはなるべく慎むべきだとされています。
会社の転勤などによりどうしても引っ越しをしなければならないようなケースを除いて、可能であれば忌明けまで引っ越しは延期したほうが無難といえます。
また、旅行に関しても、せっかく楽しみにしていた行事をあきらめなければならないのはつらいと思いますが、四十九日が過ぎるまでは慎んだ方がいいでしょう。
もちろん、忌中明けとなったあとであれば、普通の生活に戻っていいわけですから、引っ越しも旅行も自由に行って問題はないことになります。
喪中の期間にやってはいけないとされていること
忌中の期間が過ぎて忌明けとなれば、基本的には普通の生活に戻ってもよいとされています。
しかし、そうはいっても一周忌が終わるまでの期間である喪中の間は、慎まなければならないとされていることもあります。
喪中の期間には慎んだ方がいいとされていることについて、具体的にみていくことにしましょう。
喪中の期間は正月などの新年のお祝いはひかえる
身内が亡くなってから1年以内にむかえる新年のお祝いは、慎むべきとされています。
そのため、その年は年賀状なども出しません。
その代わりに、いわゆる「喪中はがき」を出して、不幸があったために年賀状を出すことができないということを先方にお伝えします。
喪中であることを知らない人から年賀状をいただいてしまった場合は、松の内(1月7日)を過ぎたあとに、寒中見舞いの形で挨拶状をだすようにするといいでしょう。
また、お正月をむかえるにあたって、門松やしめ縄、鏡餅といったお正月飾りも、喪中は行わないのが普通です。
基本的には2親等以内(配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)の方が亡くなったときには、正月飾りはせずに年賀状もだすべきではないとされています。
しかし最近では、2親等以内の方が亡くなった場合であっても、同居している人が亡くなったのでなければ、普通にお正月飾りをしたり年賀状を出したりする人も多くなっています。
つまり、年賀状を出さなかったり正月飾りをしなかったりするのは、配偶者や父母、子どもといった1親等以内の方が亡くなったときか、同居している祖父母や兄弟姉妹、孫などの2親等の人が亡くなったときのみです。
同居していない2親等までの身内をすべて含めてしまうと、あまりも広範囲となってしまうために、最近では同居していなければ大丈夫といったような解釈がされているわけです。
喪中の期間はお中元やお歳暮などは贈っても大丈夫か?
身内が亡くなって、まだ一周忌をむかえていない喪中の期間に、お中元やお歳暮などを贈っても大丈夫かどうか不安になる人もいることでしょう。
しかし、忌中を過ぎれば基本的に普通の生活に戻るわけですから、たとえ喪中であってもお中元やお歳暮を贈ることは問題ないことになります。
つまり、お中元やお歳暮を贈ってはいけないのは、四十九日をむかえて忌中明けとなる期間までということになります。
学校や会社を休むことになる忌引きの期間はどれくらいか?
身内が亡くなったときには、忌引き(きびき)といって会社や学校を数日間にわたって休むことになります。
この忌引きよって会社を休んだ場合には、有給扱いになるのが一般的ですし、学校も欠席扱いにはならないのが普通です。
この忌引きの期間は、亡くなった方との関係によって日数がことなりますが、一般的には次のような日数になります。
●自分の父母・・・7日
●配偶者の父母・・・3日
●子ども・・・5日
●自分の祖父母・・・3日
●配偶者の祖父母・・・1日
●自分の兄弟姉妹・・・3日
●配偶者の兄弟姉妹・・・1日
●孫・・・1日