お葬式

葬儀の生前予約をするときに注意をすべきこと~業者選び・契約内容・戒名

最近は、自分の葬儀を生前予約する人が増えているようです。

かつては、「自分の葬儀を生きている間に予約するなんて縁起が悪い」と考える人が大半でした。

しかし、生涯独身で親族とも疎遠になってしまっている「おひとりさま」や、自分の子どもには頼れないと考える高齢の人などが、葬儀の生前予約に関心を示すようになりました。

また、自分の葬儀は自分でプロデュースしたいという、葬儀に対するこだわりを持っている人も増えているようです。

ここでは、そんな近年になって注目されるようになった葬儀の生前予約に関して、注意すべき点やメリット・デメリットなどについて解説をしてみたいと思います。

生前予約をするときに気をつけなければいけない契約に関すること

葬儀の生前予約を受け付けている業者や団体はたくさんあります。

しかし、それらの業者や団体との契約内容を保証するための法的システムや社会的なシステムが、いまのところ整っていないというのが実情です。

人間はいつ亡くなるか分かりませんが、人生100年時代といわれている現代では、生前予約をしてから実際に葬儀が行われるまで数十年かかる可能性もあるわけです。

そのため、せっかく生前予約したのに、予約した本人が亡くなる前に業者が破綻してしまって約束通り葬儀が行われなくなってしまうことも考えられます。

そういったことにならないように、生前予約の契約は慎重に行わなければなりません。

契約は公正証書の形で残しておくのが無難

葬儀の生前予約をするときの契約方法は、業者や団体によって異なりますが、一番確実なのは公正証書の形で契約を残しておくことです。

公正証書であれば契約の内容を公に残しておくことができますので、業者や団体が契約の無効を主張しても、それに対抗することが可能です。

もし、身寄りのない「おひとりさま」などが亡くなった場合、契約通りに葬儀が行われたかどうかを誰も確認できないというのでは困ります。

生前予約による葬儀の契約は、本人が亡くなったあとに履行される契約になりますので、第三者が確認できる形にして残しておくのが無難といえます。

安心して契約できる生前予約業者を選ぶのは難しい

せっかく自分の葬儀を生前予約したとしても、契約をした業者や団体が将来的に破綻しないという保証はどこにもありません。

東京商工リサーチによりますと、2017年度の全国の倒産件数は8,405件(負債総額1,000万円以上)もあるそうです。

毎年のようにそれだけの数の会社が倒産しているわけですから、自分が葬儀の生前予約をした業者が倒産してしまう可能性がまったくないとはいえません。

先ほども書きましたように人生100年時代ですから、生前予約をしても実際に葬儀を行われるのは数十年先になる可能性もあります。

少なくとも、生前予約をした業者には、数十年先まで無事に経営を続けてもらわなければ困ることになります。

とはいえ、生前予約の受付をしている業者の財務状況を把握するというのは容易ではありません。

仮に財務状況が良いと判断することができても、それがこれからもずっと続くという保証はどこにもありません。

そのため、私たちにできる業者の倒産リスク回避策はそれほど多くはありません。

せいぜい古くから営業を続けていて、長期間にわたって実績を残している業者を選んだり、公的機関が関与している団体を選んだりするといった程度のことしかできないでしょう。

葬儀の生前予約をすることのメリットとデメリットを考えてみる

これから自分の葬儀の生前予約をすべきかどうかを考えている人は、まずはメリットとデメリットをしっかりと把握しておく必要があります。

そして、デメリットよりもメリットの方が大きいと自分自身で判断したうえで契約を進めるようにしましょう。

自分が死んだあと葬儀のことを考えなくても済むというメリット

葬儀の生前予約をすることの一番のメリットは、自分が死んだあとの葬儀のことを考えなくても済むようになるという点です。

自分の子どもに葬儀の負担をかけたくないという人や、「おひとりさま」で誰も自分の葬儀をしてくれそうもないという人にとっては、生前予約によってそういった不安を解消することができるわけです。

最近では「喪主代行サービス」といったものを提供している業者もありますので、生前予約と合わせてそういったサービスに申し込んでおくと、家族のいない「おひとりさま」であっても葬儀の面倒をすべて見てもらえることになります。

また、葬儀会社によっては、生前予約をすることによって費用的な割引があるところ多いようです。

葬儀費用を減らすことができるという点で、これもメリットの一つと考えていいでしょう。

また、亡くなった直後には銀行の口座が凍結されてしまうのが一般的です。

相続の問題が解決するまえに口座から現金を引き出されるなどして、銀行がトラブルに巻き込まれるのを防止する目的でそういった措置をとるわけです。

しかし、生前予約をしておけば、銀行口座が凍結されてしまっても、葬儀費用を工面することができなくなるということはありません。

この点も、生前予約のメリットの1つといえるでしょう。

生前予約の最大のデメリットは葬儀費用が無駄になる可能性がある点

生前予約のデメリットとして一番に考えなければいけないのは、先ほども書きましたように、業者が倒産してしまう可能性がつねにあるということです。

自分が死んだあとに子どもや親族に迷惑をかけたくないとの思いから、葬儀費用を事前に支払っておいたにもかかわらず、業者が破綻してしまうとそれが無駄になってしまうわけです。

葬儀費用の全国平均は189万円だといわれています。

関連記事:お葬式費用の全国平均は189万円~葬儀一式・寺院への費用・飲食接待費
         

業者の破たんによって、そんな大金をドブに捨てることになってしまっては大変です。

遺族にしてみれば、そのお金を普通に相続してもらって、葬儀費用にまわした方がよかったと思うに違いありません。

また、家族や親族がいるにもかかわらず、そういった人たちに知らせずに生前予約をした場合、遺族の間でもめ事が起こる可能性があります。

特に、故人が散骨などの一般的ではない葬儀を生前予約していた場合などは、宗派の問題や家族の意向との違いによってトラブルになってしまうかも知れません。

そのため、家族や親族のいる方が葬儀の生前予約をするときには、どういった形の葬儀にするかということを、事前に相談しておく必要があります。

生前予約をするときに生前戒名をつけることも可能です

葬儀を生前予約するときに、自分の戒名をつけておきたいと考える人もいるかも知れません。

戒名というのは、亡くならないとつけてもらえないと思っている人もいるかも知れませんが、そんなことはありません。

もともと戒名というのは、仏様の弟子になった証として、出家をする僧侶が戒律を守るしるしとして授かるものです。

つまり、戒名というのは生きている人間が授かるものだったのです。

また、仏教では、戒名をつけることで極楽浄土に行くことができるという考え方があります。

そのため、亡くなった方が俗名のままだと無事に極楽浄土にたどり着けない可能性があるために、葬儀のときに戒名をつけているわけです。

戒名というものが、もともとは生きている人間につけられていたものだということから考えた場合、葬儀の生前予約をするときに生前戒名をつけてもらうことはまったく問題ありませんし、縁起が悪いなどということもありません。

生前戒名をつけてもらう方法は宗派によって異なりますので、菩提寺などに相談をしてみるといいでしょう。

帰敬式や受戒会といった儀式を行うことで、生前戒名を授けてもらうのが一般的です。

身寄りのない「おひとりさま」が葬儀の生前予約をしていないとき

身寄りのない「おひとりさま」が亡くなったときであっても、葬儀の生前予約をしておくことで業者がお葬式を行ってくれます。

しかし、そういった人が葬儀の生前予約をしていない場合、葬儀はどうなるのでしょうか?

地域の方との交流があり、近隣の人と親しくしていた人であれば、そういった人たちの中の誰かが喪主となって葬儀を行ってくれることもあるでしょう。

もし、そういった近隣との付き合いもまったくないという人が亡くなったときには、墓地埋葬法により、自治体の市区町村長が火葬を行うことになっています。

行われるのは火葬のみで、葬儀が行われることはありません。

そして、火葬された遺骨は、自治体で一定期間(5年ほど)保管をしておいて、誰も引き取り手がなければ、自治体が管理している無縁墓に合祀されることになります。

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