墓じまい

墓じまいで高額な離檀料を請求されるトラブルが増えています~支払を拒否すると埋葬証明証が発行されない?

最近は墓じまいをする人が増えています。

生まれ故郷にあるお墓を守っていくことが難しいと感じた人たちが、墓じまいをして自宅近くの墓地に遺骨を移したり、永代供養を行ったりするケースが多くなっています。

ただ、墓じまいにあたって、お墓を管理している寺院とトラブルに発展するケースも少なくありません。

それは、「離檀料」の問題です。

「離檀料」というのは、最近作られた造語で、檀家をやめるときにお寺におさめるお金のことをいいます。

墓じまいをする際に、お寺が多額の離檀料を請求するケースが増えており、支払を拒否すると埋葬証明書を発行しないなどと言われて、トラブルになるケースが増えています。

ここでは、墓じまいをするときに、離檀料を請求されたらどのように対応すべきかについて解説してみたいと思います。

参考:「墓を引っ越しする」と言ったら、寺から高額な費用を要求された

墓じまいが増えていることはお寺にとっては死活問題

お寺というのは、基本的に檀家さんからの法事のときにいただくお布施や墓地の管理費などで生計を立てています

これは、江戸時代の寺請制度のころからずっと続いている仕組みで、お寺というのは長い間檀家さんたちによって支えられてきたわけです。

ところが、最近は墓じまいをする人が増えてきたために、こういった仕組みを維持することが困難になってしまい、お寺にとってはまさに死活問題となりつつあるわけです。

つまり、檀家の数が減ることによって「食えない」お坊さんが、最近では増えているのです。

坊主丸儲けなどといわれたのは過去の話です

お布施をしてくれる檀家さんが離れていってしまうと、お寺を維持管理することができなくなってしまいます。

実際に、住職が生活することができなくなって、廃寺となってしまうところが全国的に増えています。

全国のお寺のなかで、経営的に安定しているのはわずか2割程度で、約6割のお寺は兼業じゃないと生活をしていくことができないといわれています。

つまり、「坊主丸儲け」などといわれたのは、過去の話なのです。

参考:「坊主丸儲け」はウソ?檀家にせまる危機とは

お坊さんにも生活あるわけですから、離檀料をとることそのものが悪いということではありません。

問題なのは、その離檀料の額です。

檀家が離れてしまうのを食い止める手段として、一方的に数百万円もの離檀料を請求するというのは、身勝手であるといわざるを得ません。

離檀料が非常識なほどに高額であれば、檀家とトラブルになるのは当然の話です。

お寺から高額な離檀料を請求されたらどうすればいいか

檀家がどんどん離れていってしまうお寺もたしかに気の毒ですが、かといって数百万円もの高額な離檀料を請求されてポンと払えるだけの太っ腹な檀家はそれほど多くはないでしょう。

実際に200万円や300万円といった、法外な離檀料を請求されることもめずらしくありません。

なかには1千万円という、ありえないような金額の離檀料を請求されたという人も実際に存在します。

もちろん、離檀料の金額に明確な根拠などはありません。

「ここにお墓を建ててから200年になるから200万円払いなさい」とか「お墓を建てるときに2000万円かかったのだから、離檀するのであれば半分の1000万円払いなさい」といった、支離滅裂な理由で金額を決められたりします。

離檀料そのものに決まった金額というものがなく、あくまでもお寺側の言い値で決められるため、このように高額な離檀料を請求されたりすることがあるわけです。

もっとも、これは離檀料に限ったことではなく、もともとお寺というのは、お金のやり取りに関して不明瞭な部分が多いのは事実です。

たとえば、葬儀や法事のときのお布施の額も、家柄を見て決めるといったようなことが普通に行われています。

つまり、立派な家に住んでいて、お金をたくさん持っていそうな家からは、高額なお布施をいただき、裕福ではない家庭の葬儀や法事を行うときには、手頃な額のお布施をいただくといったようなことをするわけです。

そのため、お墓を建てるために2千万円もかけるようなお金持ちに対しては、離檀料として1千万円くらい請求するのは当然と考えているのかも知れません。

法的には改葬の際に離檀料を支払う必要はありません

墓じまいをして改葬をするにあたって、離檀料を支払わなければならないという法的な根拠はなにもありません。

そもそも、改葬と檀家を離れることは別の問題です。

改葬に関しては、「墓地、埋葬等に関する法律」の第2章に記載がありますが、あくまでも自治体の許可関係のことが書いてあるだけで、離檀料などの費用的なことに関しては一切書かれていません。

参考:墓地、埋葬等に関する法律

法的な根拠はまったくないにもかかわらず、風習的に離檀料をとる寺院が存在するというのが実際のところです。

ですから、離檀料の支払いを拒否したとしても、法的にはまったく問題がないということになるのです。

離檀料を支払わなければ埋葬証明書を発行しないと脅す住職

数百万円もの高額な離檀料を請求されて、いわれた金額をそのまま素直に支払う人はあまりいないでしょう。

「とてもじゃないですが、そんな大金はお支払いすることができません」と難色を示すのが普通の人の感覚です。

しかし、お寺の方もなんとか支払ってもらおうと強気に出てきたりします。

「離檀料が支払えないのならば埋葬証明書は発行できませんね」などと、脅すようなセリフを吐く住職もいます。

埋葬証明書は、改葬の許可申請をするときに必要な書類で、既存の墓地の管理者に発行してもらわなくてはなりません。

遺骨を移設するときには、役所に改葬許可申請を出さなければいけない点を逆手にとって、高額な離檀料を請求してくるわけです。

また、お坊さんによっては、「祟りがありますよ」とか「家族に不幸がありますよ」などといった言葉を、捨て台詞のように吐く人もいるようです。

仏に仕える身の人間が、そのような檀家を脅すようなセリフを吐くこと自体ナンセンスな話です。

そのような住職のいるお寺に先祖の供養をお願いすることはできませんので、離檀をすることそのものは大正解といえます。

ただ、埋葬証明書を発行してくれないことには、墓じまいの手続きを進めることができませんので、困ってしまう人も多いことでしょう。

埋葬証明書を発行してくれなかったら役所に相談

しかし、そんな脅しに負けて高額な離檀料を支払う必要などまったくありません。

先ほども書きましたように、離檀料の支払いに法的な根拠はありませんので、支払を拒否したからといって埋葬証明書を発行しないなどという理屈は通用しません。

そもそも離檀をさせないという行為そのものは、憲法20条の「信用の自由」に反する可能性があります。

どうしても埋葬証明書を発行してくれない場合は、とりあえず市区町村の役所に相談してみることをおススメします。

役所の職員から住職に対して、埋葬証明書を発行するように指導してくれるはずです。

それでも、住職が埋葬証明書を発行してくれないときには、民事訴訟を起こすことも考えられなくはありませんが、できればそこまで話をこじれさせたくないというのが、多くの人の本音でしょう。

そういった場合は、高額な離檀料を下げてもらうなどの交渉をお寺側とする必要がでてきます。

もちろん、ケンカ腰で住職と交渉するのはよくありません。

お坊さんはプライドの高い人が多いですから、へそを曲げられてしまうと、ますます話がこじれてしまいます。

あくまでもこれまで長い間先祖のお墓を置かせてもらったことへの感謝の気持ちをつたえつつ、経済的な理由から高額な離檀料を支払うことは難しいということを説明しなければいけません。

実際に根気強く話し合いを進めた結果、当初200万円だった離檀料を30万円まで下げてくれた事例もあります。

よほど仏門の道から外れた強欲坊主でない限り、話し合うことで解決の糸口は見えてくるはずです。

離檀料の適正な相場というのはどれくらいでしょうか?

離檀料に法的な根拠はまったくないとはいえ、多くの人は先祖代々のお墓をこれまで管理してくれたお寺とはもめたくないと思っているに違いありません。

墓じまいをしたいと言い出しただけで怒り出す住職もいるようなので、そんな雰囲気のなかで火に油をそそぐように離檀料の支払いを完全に拒否できる人はなかなかいないでしょう。

ある程度の納得がいく金額であれば、これまで長い間お世話になった感謝の意味もこめて、常識的な範囲で離檀料をお支払いしたいと考える人は少なくないはずです。

ですから、あくまでも問題になるのは、離檀料というのはどれくらいが相場なのかという点だと思います。

離檀料の目安としては法要で渡す金額の2回~3回分

離檀料にはあらかじめ決められた定価のようなものはありません。

そのため、離檀料をまったく請求しない寺院というのも実際には多いのです。

その一方で、200万円だとか300万円などという法外な金額を請求してくる寺院もあるわけです。

しかも、その金額はかなり流動的で、裕福な家だと思われたら1千万などという高額な離檀料を請求される可能性もあります。

しかし、離檀料に定価はないとはいっても、ある程度の常識の範囲での目安というものは存在します。

その目安となるのが、法要のときに納めるお布施の金額です。

だいたいの目安として、法要のときに納めるお布施の2回~3回分が離檀料の相場だといわれています。

たとえば、法要のときに住職に5万円を渡す檀家であれば、10万円~15万円が離檀料の目安ということになります。

どんなに高くても、せいぜい30万円~50万円以下と考えるべきです。

決して少ない額ではありませんが、長い間にわたって先祖の霊がお世話になったお寺へ感謝の気持ちとして、これくらいの離檀料は仕方がないといえそうです。

もし数百万円などという高額な離檀料を請求されたら、なんとかこれらの範囲の金額におさまるように、住職と根気強く話し合ってみるといいでしょう。

先ほども書きましたように、墓じまいをしても離檀料を1円もとらない寺院はたくさんあります。

また、離檀料をとる場合でも、「お気持ちで結構です」などと言ってくれる寺院も多いのです。

常識から逸脱した数百万円などという離檀料は、とても払えないということを根気よく主張すべきです。

ただし、民事訴訟を起こすなどというのは、最後の手段と考えるべきです。

裁判というのは合法的なケンカですから、勝っても負けてもお互いに後味が悪くなってしまうものです。