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なぜお墓を捨てるのか?~墓守をする人がいない無縁墓が全国的に増えています

お墓の管理をする人が誰もいなくなってしまったために、無縁墓となってしまうお墓が全国的に増えているようです。

墓守のいなくなってしまった無縁墓は、やがて解体撤去処分されることになります。

撤去された墓石は、業者によって細かく砕かれて、道路工事用の砕石として再利用される運命となります。

また、墓に納められていた遺骨は、他の遺骨といっしょに合祀されてしまいますので、あとから取り出すことは不可能になります。

なぜ、先祖代々のお墓を無情にも捨ててしまう人が増えているのでしょうか?

日本人から「家を継ぐ」という概念がなくなってしまった

かつての日本には、長男が家を継ぐという考え方が、常識として存在していました。

そして、先祖代々のお墓を管理する墓守の役割も、家を継いだ長男が受け継ぐのがあたり前とされていました。

しかし、いまの日本には「家を継ぐ」という概念はなくなってしまっています。

子どもが実家にいるのは、せいぜい高校を卒業するまでで、大学に入学すると同時に実家を離れて、そのまま就職してからもずっと親とは別に暮らすというのが、いまの日本人の一般的なライフスタイルです。

たとえ長男であっても、親の家から出て行ってしまうのが普通になっています。

親と別に暮らすといっても、実家の近くに家庭を持つような場合であれば、墓守を引き継ぐことも可能でしょう。

しかし、地方から都会に出て行ってしまった子どもたちが、お墓の管理を続けて行くというのは容易ではありません。

まだ親が健在なうちは、盆や正月に実家に帰ったついでに墓参りに行くことはできるでしょう。

しかし、親が亡くなってしまって実家を処分してしまったような場合には、お墓の管理のためだけに帰省をするというのは容易ではありません。

特に、いま住んでいるところからお墓のある場所までが遠方だったりすると、交通費の負担もバカになりません。

だんだんとお墓参りにはいかなくなり、やがては無縁墓となってしまう可能性が高くなります。

自分が生まれ育った地域で、死ぬまで生活を続けるという人が少なくなっているということが、無縁墓を増やす原因の1つになっていることは間違いありません。

日本人が長生きになったことが墓守をする人がいなくなる原因の1つ

日本は世界でもトップクラスの長寿国になっています。

特に女性は、平均寿命が90歳に迫る勢いです。

実はこうした高齢化が、無縁墓を生んでいる1つの理由になっているのです。

たとえば、90歳で亡くなった人の三十三回忌を誰がするのかという問題があります。

90歳で亡くなった人の三十三回忌をするころには、すでに子どもたちも亡くなっている可能性があります。

そうなると、孫がおじいさんやおばあさんの三十三回忌をしなければならなくなります。

かつてのように三世代同居があたり前の時代であれば、孫がおじいさんやおばあさんのお墓を大切にしたいという気持ちをいだくかも知れません。

しかし、いまや三世代同居は非常にまれです。

孫がおじいさんやおばあさんに会うのは、せいぜい正月やお盆に帰省をしたときくらいというケースも多いでしょう。

たまにしか会ったことがなく、ほとんど記憶にも残っていないおじいさんやおばあさんのために、孫がしっかりと法事や墓参りをしてくれる可能性は決して高くはないでしょう。

日本人が長生きをするようになったことが、皮肉なことに無縁墓を生み出す結果となっているのかも知れません。

天涯孤独のおひとりさまがお墓を捨てるケースも増えています

日本では、年々未婚率が高くなっています。

2015年に行われた国勢調査によりますと、男性の生涯未婚率は23.4%、女性が14.1%となっています。

ちなみに、生涯未婚率というのは、50歳の時点で過去に1度も結婚をしたことのない人の割合です。

1985年の調査では、未婚率は男性が3.9%、女性が4.3%でしたから、ここ30年ほどで急速に増えているということが分かります。

厚生労働省の予測によると、2030年の生涯未婚率は男性が36%、女性が27%になるであろうとされています。

生涯独身の人がどんどん増えて行くことによって、先祖のお墓をその子孫が管理をしていくというこれまでの慣習が成立しなくなってしまうことになります。

生涯独身のおひとりさまが亡くなった場合、これまでその人が管理をしてきた先祖代々のお墓を管理してくれる人を探すというのは非常に困難です。

誰も管理をする人がいなくなれば、そのまま無縁墓となってしまうのは必然といえます。

無縁墓はやがて寺院や霊園によって撤去されることになります

お墓が放置された状態になると、霊園や寺院ではお墓の前に看板を建てたり、戸籍をもとにお墓の継承者を探したりといったことをします。

それでもまったく連絡がとれずに、長期間にわたって管理費の滞納が続くと、お墓は解体撤去されてしまうことになります。

お墓というのは、不動産のようにずっとその場所に資産として残しておけるわけではありません。

お墓を建てるときには、霊園や寺院に永代使用料を支払って、墓地を永代にわたって借りる契約をします。

しかし、この「永代」というのはあくまでも、墓守がいて管理費を支払ってくれる人がいることが条件になります。

たいていの墓地の使用規則には「〇年以上管理料を収めない場合」や「墓地使用者が〇年以上不明になり、相続または継承の申し出がない場合」は、永代使用権が取り消しになるということが書いてあります。

霊園や墓地によっても異なりますが、管理費の滞納が5年間ほど続くと、お墓は解体撤去されてしまうことが多いようです。

霊園や墓地としても、墓守がいなくて管理費もこのままずっと徴収できないということであれば、解体撤去も致し方ないといえます。

冒頭にも書きましたように、解体撤去されたお墓は、業者によって処分場まで運ばれて、道路工事用の砕石として再利用されます。

しかし、墓石を粉砕する作業というのは基本的にどこの業者も嫌がりますので、受け入れてくれる処分場は限られており、費用もそれなりに高額です。

そのため、解体撤去したお墓を不法投棄してしまうような悪質な業者も存在するようです。

自分のお墓が不法投棄されてしまったご先祖様は、さぞや無念であるに違いありません。

お墓を解体撤去したあとの遺骨に関しては、処分するということは法的にできませんので、敷地内にある合祀墓に他の遺骨といっしょに納められることになります。

無縁墓にしないための墓じまいから永代供養という選択肢

先祖代々のお墓を放置して、そのまま捨ててしまう人が増えているなか、さすがにそこまで罰当たりなことはできないとの思いから「墓じまい」を選択する人も増えています。

「墓じまい」をして故郷にある先祖代々のお墓を自宅の近くの墓地に移したり、自分たちがお墓参りに行かなくても済むように、永代供養墓に遺骨を納めたりするわけです。

こうすることで、お墓参りや法事のたびに交通費をかけて遠く離れた生まれ故郷まで戻る必要はなくなるわけです。

また、永代供養墓とすることで、十七回忌や三十三回忌などの費用もすべて初期費用に含まれており、その後の墓地管理費用などを支払う必要もありませんので、費用的な面でもメリットがあります。

ただ、こうした「墓じまい」もスムーズに行くとは限らず、寺院から高額な離檀料を求められたりしてトラブルになることも少なくないようです。

参考記事:墓じまいのときトラブルになりがちな高額な離檀料~埋葬証明書が発行されない?
       
また、永代供養といっても、未来永劫にわたってずっと供養をしてくれるというわけではありません。

寺院や霊園によっても異なりますが、三十三回忌までとなっているところが多いようです。

その期間がすぎると、最終的には合祀という形で他の遺骨といっしょにされてしまうのが普通です。

合祀をされてしまうと、自分の先祖の遺骨だけを取り出そうと思ってもできなくなってしまいます。

永代供養墓という選択をしても、最終的には無縁墓となって解体撤去されてしまう場合と、遺骨の状態は同じになってしまうわけです。

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