お葬式というのは、基本的にはどのようなスタイルで行ってもいいことになっています。
法律に触れることなく、故人の尊厳を守れるやり方であれば形式や参列者の人数などにこだわる必要はないといえます。
最近では、家族葬や直葬といった小規模なお葬式を行うケースも多くなっています。
ここでは、お葬式のスタイルにはどういったものがあるのか、具体的に解説をしてみたいと思います。
多くの人に参列してもらう昔ながらのお葬式が一般葬です
古くから行われているたくさんの人が参列するお葬式は、一般葬と呼ばれます。
親族だけではなく、近所の方や会社関係の人、あるいは故人と親しかった人たちなど、多くの人に広く参列してもらうスタイルのお葬式になります。
特に定義というものはありませんが、参列者の数が50人以上のお葬式を一般葬と呼ぶことが多いようです。
現在、国内で行われているお葬式うち、一般葬で行われるのは全体の6割ほどだといわれています。
地方ではまだまだ一般葬で行われるところが多いですが、都市部では家族葬や直葬といった小規模なお葬式を選択するケースが多くなっており、一般葬の割合が2割程度のところもあるようです。
一般葬を行うことのメリットやデメリット
一般葬は大勢の人が参列するために、準備などで大変な思いをするというイメージがあります。
しかし、基本的には葬儀社におまかせで滞りなく葬儀を済ませることができますので、当家がやらなければならないことはそれほど多くはありません。
また、一度にたくさんの人に弔問をしてもらうことができるために、家族葬のようにあとになって個別に自宅に弔問に訪れる人の対応をしなくて済むというメリットがあります。
しかしその一方で、どうしてもお葬式の規模が大きくなりますので、家族葬などにくらべて高額な葬儀費用が発生してしまうというデメリットもあります。
都市部を中心に増えている親族だけで行う小規模な家族葬
最近では、あえて一般葬を行わずに、身内だけでこじんまりと行う家族葬を選択する人も増えているようです。
国内で行われるお葬式のうち、家族葬で行われるのは全体の2割ほどだといわれています。
ただし、都市部だとこの割合が高くなり、家族葬の割合が5割を超えるようなところもあるようです。
家族葬といっても、お葬式の基本的な流れは一般葬とほとんど変わりはなく、参列をする人が家族や親族だけになるために規模が小さくなるという点だけが異なります。
家族葬の場合も特に定義はありませんが、一般に参列者が50人以下の場合を家族葬と呼ぶことが多いようです。
家族葬でお葬式をするときのメリットとデメリット
家族葬でお葬式を行うメリットとしては、参列者が少ないために、親族だけで故人をゆっくりとお見送りできるという点があげられます。
人数の多い一般葬だと、参列者の対応に追われてゆっくりと故人を偲ぶ時間がなかったりしますが、気心が知れた家族や親族だけで行う家族葬であれば、精神的にもだいぶ楽になることでしょう。
また、家族葬は参列者の数が少ないために、葬儀の全体的な費用をおさえることができます。
ただし、参列者の数が少ないということは、いただくお香典も少なくなってしまいますので、葬儀社に支払う費用やお坊さんに支払う費用の自己負担分が、一般葬のときよりも多くなってしまう場合もあります。
家族葬のデメリットとしては、身内以外に亡くなったことを知らせずにお葬式をしてしまうため、あとになって個別に弔問に訪れる人が少なくありません。
一般葬であれば葬儀が終わったあとはひと段落できますが、家族葬の場合はこうした個別の対応がけっこう大変だったりします。
また、個別に弔問に来た人のなかには「なぜ葬儀の連絡をくれなかったのか」とクレームを言う人もいるかも知れません。
一般葬にくらべて負担が軽いと考えられている家族葬ですが、そういったデメリットもあるということを覚えておくといいでしょう。
セレモニーを行わずに火葬をするだけで済ませてしまう直葬
直葬というのは、お葬式のスタイルというよりも、お葬式そのものを行わないスタイルになります。
病院や霊安室から直接火葬場に行って、お骨だけを自宅に持ち帰るというやり方です。
ただし、直葬とはいっても法的には亡くなってから24時間は火葬をすることはできませんので、それまで待ってから行うことになります。
葬式そのものは行わなくても、火葬のときにお坊さんにお願いして読経をしてもらうことは可能です。
お葬式をせずに直葬が行われる背景とさまざまな理由
直葬が行われる理由にはさまざまなものがあります。
たとえば、故人が生前に、遺族に負担をかけまいと直葬にしてほしいと言い残しているケースがあります。
最近では、エンディングノートなどにそういったことを記載して、自分の家族に渡す人が多くなっています。
また、遺言書のなかで葬儀は行わないようにとの記述がされていることもあるでしょう。
もちろん、遺族のなかには単純に葬儀費用をかけたくないために直葬にするという人もいます。
長い間の介護でたくさんのお金を使ってしまったので、葬儀代にまわすお金がなくなってしまったといった理由の人もいるようです。
故人が望んで行う直葬であれば問題はありませんが、そうでない場合には故人の尊厳という観点から、直葬で済ませるというやり方には賛否が分かれるところだと思います。
ちなみに、直葬で済ませるケースは、日本国内のお葬式のうち、全体の1割以下だといわれています。
密葬というのは家族葬とどこが違うのでしょうか?
密葬という言葉を聞いたことがある人も少なくないでしょう。
密葬という言葉のニュアンスから、家族葬に似たようなイメージを持たれることが多いようです。
しかし、密葬というのは、家族葬とは明らかにその趣旨が異なります。
家族葬の場合は、一度葬儀を行ったら、その後にあらためて行うことはありませんが、密葬の場合は、基本的にあとから本葬を行うことを前提にして行われます。
密葬も家族葬も、近親者だけで行われる点は共通していますが、本葬を前提としているかいないかという点に大きな違いがあります。
密葬というのはどういったときに行われるのか
密葬というのは、基本的にあとで本葬を行うことが前提になっているわけですが、どういった状況のときに行われるのでしょうか?
たとえば、大きな会社の創業者が亡くなったり有名人が亡くなったりしたような場合には、葬儀や告別式には相当な数の参列者が訪れることが予想されます。
そういったケースでは、葬儀の準備に時間がかかってしまうことが少なくありません。
そのため、とりあえず家族だけで密葬を行って、後日あらためて本葬を行うといったことが行われます。
また、そういった有名人ではなくても、たまたま亡くなったのが年末年始であったり、旅先で亡くなってしまったりしたような場合にも、とりあえず密葬という形で済ませて、あとで本葬を行うということが行われたりします。
まだ元気なうちに行うのが生前葬になります
生前葬というのは、文字通りまだ生きているうちに自分のお葬式を行うというものです。
まだ元気なうちに、これまで縁のあった方やお世話になった方を招待して、お別れと感謝を述べるという趣旨で行われることが多いようです。
形式は特に決まっておらず、立食のパーティー形式で行ったり、カラオケ大会のような催しにしたりすることもあるようです。
ただし、生前葬を行っても、家族の意向により亡くなったあとに正式な葬儀が行われることもあるようです。
これまでに生前葬を行って、現在も生きている有名人としては、「桑田佳祐」「カンニング竹山」「ビートたけし」「テリー伊藤」「小椋佳」「アントニオ猪木」などがいます。
参考:生前葬を行う一般人が少ない理由とは?~ビートたけしや桑田佳祐で話題になった生前葬
また、現在の生前葬とは趣旨が違いますが、戦国武将などはいつ死ぬか分からない状況にあったために、「逆修」といって生きているうちに自分の戒名を授かるという風習があったようです。