お葬式を済ませたあとは、遺骨を自宅に持ち帰り、四十九日の法要が終わったあとにお墓に納めるというのが一般的な流れです。
しかし、最近では家族が葬儀をしないで、遺骨も引き取らないというケースが増えているようです。
もちろん、お墓を作るということもしません。
業界では、そういった形式を「0葬(ぜろそう)」と呼んでいます。
なぜ、正式なお葬式をせずに「0葬」で済ますケースが増えているのでしょうか?
また、火葬をしたあとに遺骨を預かったり、宅配でお寺まで運んで供養をしてもらったりするサービスなども人気になっているようですが、そこにはどういった背景があるのでしょうか?
遺骨を一時的に預けるサービスや郵送で合祀してもらうサービス
家族が亡くなった方の遺骨を埋葬せずに、業者に預けてしまうというケースが増えています。
業者が提供するサービスは、遺骨を一時的にあずかる「預骨(よこつ)」、自宅まで遺骨を引き取りに来てくれる「迎骨(げいこつ)」、宅配便で遺骨を送って合祀してもらう「送骨(そうこつ)」がの3つがあります。
「預骨」は一時的に遺骨を預かるサービス
預骨」は、お墓を建てるまでの間、業者が一時的に遺骨をあずかるというサービスになります。
保証金3万円程度で遺骨を預けることができる手軽さから、利用者が増えているようです。
しかし、なかには遺骨を預けっぱなしにして、引き取りに来ない人もいるようです。
ひどいケースになると、遺骨を預けた家族とまったく連絡が取れなくなってしまったりすることもあるようです。
業者側としても、預け入れ期限が過ぎてしまって誰も引き取りに来ない遺骨をそのままにしておくわけにはいきませんので、合同墓に他の遺骨と一緒に埋葬されることになります。
身寄りのない一人暮らしの人の遺骨ではなく、家族のある方の遺骨が誰にも引き取られずに放置されてしまうのです。
「お墓を建てる費用がない」「ずっと別居だったので家族と思っていない」など、さまざまな事情はあるようですが、家族がいるにもかかわらず遺骨が平然と放置されてしまうケースが増えているということに驚きを感じます。
「迎骨」は自宅まで遺骨を引き取りに来てもらうサービス
「迎骨」は、葬儀のあと自宅に保管してあった遺骨を引き取りに来てもらうサービスです。
3万円と交通費のみで、引取りした遺骨を提携しているお寺の合同墓まで運んで埋葬をしてくれます。
お墓を建てる予定はないけれども、自宅にこのままずっと遺骨を置いておきたくないという人が利用しているようです。
遺骨を宅配便で送る「送骨」
「迎骨」は遺骨を引き取りに来てもらうサービスですが、「送骨」というのは宅配便を利用して遺骨をお寺まで送るという、ある意味ではお手軽なサービスです。
こちらも、3万円程度の安い費用で、遺骨を合祀してもらうことができます。
身寄りのない人が自治体によって火葬されたあとに、別れた元の配偶者のところに遺骨を引き取ってもらいたいと連絡が入ったりすることがあるようです。
もちろん、離婚が成立している以上はただの他人ですから、引き取りをする義務はありません。
しかし、自分の元配偶者ということになると、そのまま無縁仏にしてしまうのはかわいそうだという思いから、子どもたちと相談して引き取ってしまうこともあるようです。
そういったケースの場合は、遺骨を自分たちと同じお墓に入れることもできないために、「送骨」サービスを利用したりするようです。
ちなみに、遺骨の配送をしてくれる業者は、いまのところ「ゆうパック」だけのようです。
他の業者は、紛失してしまったときの責任が取れないということで、取扱いがないようです。
そもそも遺骨を自宅に置いておくことは問題があるのでしょうか?
「預骨」や「迎骨」、「送骨」といったサービスを利用する人は、自宅に遺骨を置いておきたくないという理由があるわけです。
しかし、自宅でずっと遺骨を保管していたとしても、別に何かの法律に触れるということはありません。
本人が気にしなければ、そのままずっと遺骨を自宅で保管しておいてもまったく問題ないわけです。
ただし、あくまでも「保管」をすることが合法なのであって、遺骨を庭に埋めたり、勝手にお墓を作ったりするのは墓地埋葬法に違反することになります。
お墓に埋葬をしないのであれば、ずっと自宅に保管をしておく必要があるわけです。
自宅に遺骨を置いたままにしたくない人たちがサービスを利用
お墓がない家の場合は、遺骨を埋葬することができないために、自宅で保管をすることになるわけですが、やはり自宅に遺骨があるということに抵抗を感じる人も少なくないでしょう。
「なんとなく怖い」とか「たたられる」などと考える人もいるかも知れません。
実際にはそんなことはないのですが、気にする人は気にするものです。
また、自治体で火葬された遠い親戚の人の遺骨を、身寄りがいないという理由で自治体から引取りを依頼されてしまうようなケースもあります。
ほとんど顔も見たこともないような遠い親戚の遺骨を、そのままずっと自宅に置いておくのも嫌だと感じる人もいるでしょう。
仮に自宅に遺骨を置いておくことにまったく抵抗がない人であっても、子の代や孫の代まで、ずっと自宅に遺骨を置いたままにしておくことはできないでしょう。
実際に、孤独死された人の部屋から、すでに亡くなった親や配偶者の遺骨を納めた骨壺などが発見されることも少なくないようです。
そういった、なんらかの理由があってお墓に遺骨を埋葬することができない人たちのニーズに答えるのが、まさに「預骨」「迎骨」「送骨」というサービスなわけです。
「預骨」で放置するなら「迎骨」や「送骨」を利用すべきです
「迎骨」「送骨」の場合は、遺骨はお寺で合祀墓に埋葬されることになりますので、そのあと遺族がやることは何もなくなります。
しかし、「預骨」の場合は、あくまでも一時預かりという形になりますので、決められた期限が来れば遺骨を引き取らなければいけません。
一時預け入れをしている間に、お墓などの準備をしておくというのが本来の「預骨」の使い方なはずです。
ところが、実際には先のことを何も考えずに「とりあえず預けてしまう」という人が少なくないようです。
そして、先ほども書きましたように、遺骨を預けたまま音信不通になってしまうような遺族もいるわけです。
つまり、遺骨を自宅に保管したくないけれども、かといって捨てるわけにもいかないということで、「預骨」というサービスを安易に利用してしまうのでしょう。
そのような無責任な「預骨」の利用の仕方をするのであれば、「迎骨や「送骨」という形で、しっかりと寺院で永代供養をしてもらう方がいいでしょう。
合祀されてしまった遺骨は二度と取り出すことはできません
「迎骨や「送骨」の場合、遺骨を納めた寺院で永代供養をしてもらえることになりますが、あくまでも合祀という形になります。
つまり、個別に遺骨を骨壺に入れたまま供養をしてもらえるわけではなく、他の遺骨と一緒に埋葬されてしまうわけです。
そのため、一度埋葬されてしまった遺骨は、他の遺骨と区別がつかなくなってしまいますので、二度と取り出すことはできなくなってしまいます。
3万円程度の料金で永代供養という形で遺骨を納めることのできる「迎骨や「送骨」ですが、本当にそういったやり方であとになって後悔しないかどうかを慎重に考えてから利用するようにすべきでしょう。